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「風」なき選挙、比例が握る政権枠組み

衆院選は4日午後5時、候補者の立候補届出を締め切り、本格的な選挙戦に突入した。土壇場まで選挙区のくら替えや党の変更や新党などが相次いだ今回は、きょうになってようやく、有権者が出馬している候補を把握できた選挙区が多い。個々の選挙区の構図が固まるのが遅かっただけに、各党とも手応えを探っている段階にある。とりわけ前2回のような「風」がない状況での比例代表の投票行動は読みにくい。政権枠組みを巡る選挙結果は、定数480のうち180を占める比例代表が握っている。

小選挙区は候補者の名前を書き、比例代表は党名を書く方式で実施される日本の「小選挙区比例代表並立制」は1996年に始まり、今回が6回目になる。「政権交代」「郵政民営化」が旋風を起こした前2回の比例代表結果をみると、09年は民主が87、05年は自民が77と、4割以上の議席を得た。この2回は選挙区、比例とも同じ党に投票した有権者が多かったとみられるが、今回は「小選挙区と比例で投票先をわけるスプリット・ボートが増えるのではないか」との見方が出ている。その意味では今回、参考になるのが96年の選挙だ。

衆院選が公示され、大阪・梅田で街頭演説を聞く人たち(4日午前)=共同

当時は橋本龍太郎首相がトップを務める自民党と、小沢一郎氏が率いた新進党との対決が軸で、そこへ新たに民主党が割って入る構図ができた。いまの「第三極」のはしりだ。自民党は過半数をとれず、新進党もふるわない結果に終わったが、比例200(当時はいまより20多かった)のうち自民70、新進60でさほどの差はなかった。民主党は小選挙区17にとどまったが比例で35をとって50を超え、その後の「自民・民主二大政党制」につなげた。このほか共産党が比例24(選挙区は2)、社民党が比例11(選挙区は4)の結果で、新党さきがけは比例ゼロ、選挙区2に終わり、やがて終焉を迎えた。比例の獲得議席が二大政党以外の政党にとって、決定的な役割をはたしたといえる。

当時の分析では「まだまだ自民党を勝たせすぎてもいけない。かといって党内がごたごたしている新進党を大きく伸ばすのもどうか」との有権者心理が、第三極だった民主党への比例得票を伸ばしたのだ、とされた。自民、民主に新・第三極が割って入り、他の既成政党も負けじとがんばる構図は、今回と酷似している。

候補の顔がみえ、有権者の投票先が固まりやすい小選挙区とは違い、比例代表は「党首力」や「期待度」によって、最後まで変わり得る。政権枠組みを左右する最終議席数のカギを、比例が握るゆえんだ。

4日、大阪での維新の出陣式で、スマートフォンや携帯電話で写真をとる聴衆は少なかった。「郵政選挙」で自民党の小泉純一郎総裁が街頭に立つと、一斉に聴衆が携帯カメラを向けたのとは様変わりだ。ある一点が最大の争点となるブーム型ではなく、多岐にわたる争点でまず話を聞いてから決めたいとの機運が広がっている象徴のようでもあった。

(丸谷浩史)

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