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放射性廃棄物の処分場選び、地域の判断を尊重

NUMOの山路理事長に聞く

編集委員 滝 順一

原子力は「トイレなきマンション」とよく言われる。国の計画では、使用済み核燃料を再処理した後に残る、非常に強い放射能を帯びた廃棄物(高レベル放射性廃棄物)は地下の安定した地層に埋めることになっているが、具体的な処分地は決まっていない。過去には名乗りを上げる自治体があったが、反対運動などがあり調査に入れずじまいだ。東京電力・福島第1原子力発電所事故を経て、状況は一段と厳しさを増している。処分事業を担う原子力発電環境整備機構(NUMO)の山路亨理事長に現状を聞いた。

――処分地の選定は3つの段階があり、まず関心のある自治体に手を挙げてもらって、その地域の火山噴火や地震の記録など歴史的文献を調べる「文献調査」が第1段階ですが、公募開始後10年で調査に入れた場所はひとつもありません。

「2002年に公募を開始したが、07年に高知県東洋町から初めて応募の意向が伝えられて以降はない。関心を持っていただいている地域はあるので、引き続き情報提供や情報交換を通じて事業への理解を深めていただいている。最終処分の必要性と安全性をいかに理解していただくかが大事だと思っている。11年に外部有識者から助言をいただく会議を設けたり各地でワークショップを開くなど、多様な人々から意見を聴き何が心配かなど直接は話す場をしっかりつくるよう努力をしている」

「また技術面では、NUMOが00年に誕生して以降の技術の進展を踏まえ10年に地層処分事業の安全性・信頼性を支える技術開発状況をまとめてリポートにした。現在は東日本大震災を踏まえて、安全確保について多くの人々の心配に応えられる新たなリポートを近々とりまとめるつもりだ」

――大震災以降、日本列島の地殻変動に関する科学的な知見が変わってきたとされますが、そうした新しい状況下で人々の懸念に応えられるものになるのですか。

「最終処分場の立地は活断層があったらそこは避けましょうということで、文献調査、概要調査、精密調査の3段階になっている。今回のリポートは東日本大震災後の新知見を踏まえて、第2次とりまとめ(10年報告)の再確認をすることになる」

――自治体の応募を待っていてはなかなか候補地は出てきませんが、かといってNUMOの側で候補地を選んで調査に入るのも難しいですね。

「地域の自主的な判断を尊重しないと、この事業は前へ進まない。国には地域の意向を尊重しつつ候補地の申し入れができる仕組みがある。NUMOの公募方式と合わせて、2つのやり方を活用していく。国との連携を強めて時間がかかっても粘り強く取り組んでいく覚悟だ」

 ――民主党政権での原子力政策見直しの議論で、使用済み核燃料を再処理しないでそのまま地下に埋める「直接処分」も検討されました。再処理するにしても全量ではなく一部を再処理し直接処分と併用するアイデアも選択肢でした。NUMOの立場から処分方式の変更について意見はありませんか。

「NUMOは(再処理の結果として発生する)高レベルの放射性廃棄物の地層処分がミッションだ。直接処分などの政策のありようについては、具体的な見直しが行われていく状況になれば、そこでプロセスに参加し役に立つよう頑張っていきたい」

――12年度は最終処分計画の改定の年です。福島原発事故後の状況を鑑みれば、計画を大きく見直す必要があると思いますが……。

「改定は国と相談しながらだ。繰り返すが、直接処分などの考え方は国の議論の推移を見極める必要がある。ただ私としては、資源が乏しい日本においては再処理し資源をリサイクルする方がいいと思う。また再処理によって最終的な廃棄物を体積で3~4割減らせるのは処分上の利点だ」

――現行の計画では平成40年代後半(2030年代)に最終処分場の稼働を開始することになっていますが、稼働する原発の数が減れば、スケジュールは見直すのが自然です。

「現在でも、すでにそのスケジュールはタイトな(厳しい)状況だ。ただ国の目標が変わらない限り、NUMOは目標の実現に向けて努力を続ける」

――高レベル放射性廃棄物のガラス固化体の発生量も、現行計画は2033年に4万本を見込んでいますが、見直すのでしょうか。

「現状では計画本数は4万本で進めている」

――日本学術会議が昨年、最終処分のあり方について提言をまとめ「暫定保管」や「総量管理」といったアイデアを出しました。どうご覧になっていますか。

「暫定保管で済ませ、最終処分をはっきりさせないのはどうか。(原子力発電の)便益を受けた現世代の責任において最終処分の道筋を付けることが大事だと考える。経済協力開発機構・原子力機関(OECD・NEA)も06年に最終処分を見極めることが大事と勧告するなど、しっかり最終処分にメドをつける正攻法が世界の潮流だ。立地を進めるにおいても、暫定保管では理解を得るのは難しい。学術会議は技術進歩を念頭に回収可能性を考慮する必要があるとの主張だが、私たちの考える最終処分においても(搬入口の)閉鎖のときまでは万一の時は取り出せる。回収可能性を担保していると考えている」

 ――NUMOは電力各社からの出向者が多いなど、長期間の立地の仕事に腰を据えて対応できる人が少ないのではないかとの指摘があります。

「日本は地震が多く、加えて福島事故を経験し立地が容易ではないことは確かだ。地層処分技術の流れをよく知り、新しい技術への積み重ねを理解することがNUMOの技術者として大事なことだ。現在は生え抜きの社員がおよそ半分で新卒も採っている。職員85人のうち36人が技術部で、そのうち生え抜きは18人いる。日本原子力研究開発機構などとの共同研究を通じて移籍した人たちに加えて、しっかり技術の固めができるよう若い人たちにも入ってもらっている。新卒はまだ1年に1、2人だが、すでに3期生まで採用、今年は4期生が入ってくる。将来を担う戦力だ」

「立地の仕事は各電力会社との連携が必要だ。東洋町で調査入りできなかった反省は現場に出るのが遅かったきらいがある。地域事情をよく知らずに行くといけないので地元電力と連携しながら進める体制をとっている」

――福島事故で発生した溶融燃料の処分をNUMOで担うことはないのですか。

「NUMOの立場の仕事はガラス固化体とTRU(超ウラン元素)廃棄物に限定されている。溶融燃料がどうなるのかは国の検討を見守るしかない。NUMOには地下の調査技術はあるので、仮に地層処分ということになれば私たちの経験を応用できるところはあるだろう」

――フィンランドにおける地層処分場の進展などをみると、欧州は処分場立地の問題を克服したかのようにもみえます。欧州に比べて日本はなぜ進まないのでしょうか。

「日本では処分問題を身近に考えてもらえるような状況になっていないように思える。政治問題化して地域が賛成・反対で二分されるような事態はいけない。フェース・トゥ・フェースで議論する場を設けることで乗り越えていけるのではないか。もちろんの大前提は安全性をしっかり理解してもらうことにある」

「いったん候補地にあがって調査が始まったら、そのままエスカレーターのように選定に向かうというわけではない。ダメとなったら止まる。半煮えのまま進めるのでなく、ちゃんと議論し納得してもらえるところまで持っていかないといけない。昨年10月にカナダのトロントで各国の最終処分事業者の会議があったが、どこも住民参加のありようを工夫し多様な意見の討議の場を考えて進めている」

 ■取材を終えて
 フィンランドは使用済み核燃料の直接処分場の場所を決め建設に入った。隣国のスウェーデンでも候補地が固まり、事業会社が建設申請を政府に提出した。フランスでも候補地の選定が煮詰まってきている。
 日本では2000年にNUMOが発足し電力料金を原資に処分費用の積み立てが始まった。また文献調査に応じるだけでも10億円の補助金を国が出す仕組みをつくり、候補地の手が挙がるのを待ったが、結果ははかばかしくない。高知県東洋町で07年に当時の町長が応募に動いたがリコールの動きなどもあり白紙撤回、調査着手に至らなかった。
 多額の補助金で財政の厳しい自治体を誘惑するような手法に対し批判は強い。福島事故を経て補助金漬けの立地政策への反省が高まっている。山路氏が指摘する通り、関係者がじっくり直接対話できる場の設定が大事だ。国の処分計画の改定の中で処分場選定のプロセスについても十分に議論すべき時だ。

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