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イノベーションNEXT リアルの世界に溶け込むウエアラブル

(久多良木健)

2014年は、コンセプト先行の感があったウエアラブル機器が、いよいよ本格的に市場に投入される年になりそうだ。米ラスベガスで年明けに開催された恒例の家電見本市「CES」では、ウエアラブル関連の出展企業数がおよそ300社にも上ったという。

ウエアラブルの発想自体は30年以上前からあるのだが、それが今、様々な形態で咲き誇るようになった背景には、各種センサーをはじめ、機器の心臓部となるデバイス群が格段に小型になったことと、ネットへの常時接続が可能になったことがある。

ネットワーク機器に2つの潮流

米グーグルの「グーグルグラス」に代表されるゴーグル型、ナイキの「フューエルバンド」に代表されるリストバンド型、指輪型など、体に装着するためのネットワーク機器の形態が一気に多様化しつつある。まさに百花繚乱(りょうらん)の様相だ。

CESの最前線の動向などからは、大きく2つの潮流が見える。一つはスマートフォン(スマホ)やタブレット(多機能携帯端末)など既存のネットワーク端末と連携し、その利便性や操作性をさらに拡大する腕時計型などのコンパニオン型ウエアラブル機器。

もう一つは、身体に装着することでユーザーの生体情報(バイタルサイン)を常時観察し、フィットネスや健康増進の支援を目的とするセンサー型機器だ。最近ではコンタクトレンズ型の機器で装着したユーザーの血糖値などを測定し、クラウドにデータを送るといったアイデアを披露する企業も出てきた。

スマホなどのネットワーク端末との連携を狙う前者の取り組みが、現時点ではいま一つ明快な訴求力を打ち出せないでいるなか、体温や脈拍だけでなく、血圧、日々の運動量や姿勢の変化など、通常は人々が気にすることもなかったデータ群から有用な情報を抽出し、装着したユーザーにさまざまな気付きを与えてくれる後者の取り組みは、その分かりやすさと訴求力で急速に一定の市場を形成する勢いがある。

将来的には、これら我々人間が装着するウエアラブル機器にとどまらず、さらに一歩進んで輸送システムやペットなどに装着可能なウエアラブル機器の登場も予想され、動き回るあらゆるものがネットワークにつながっていく可能性すらある。

ウエアラブルの概念をさらに拡張することで、今後は人間以外の「何に装着するか」に焦点が移っていくだろう。究極的には、あらゆるものが広範にネットにつながる「IOT(Internet of Things)」に行き着く。IOT時代には、ウエアラブルも含めたネットワーク機器自体が、リアルの世界全体に空気や水のように溶けていく時代を迎えるのではないか。

リアルとネットが同期を始める

そうなると、将来のネットワーク端末はその存在すら意識しなくて済むようになる可能性がある。リアルの世界のさまざまな事象やデータがネットワーク側にアップロードされ、クラウド側で即時に情報処理され再びリアルの世界にフィードバックされることで、これまで二元的な世界に分断されていた「リアルの世界」と「ネットの世界」が、文字通り緊密に同期するようになるだろう。

そのころには、ネットの世界と人間をつなぐユーザー・インターフェースも大きく進歩しているに違いない。キーボード入力やタッチパネルの画面をスワイプするといった従来型の操作は不要になり、人間にとってより自然なインタラクションやコミュニケーションの手法が登場している可能性がある。ウエアラブルは、そんな世界への入り口に我々を誘おうとしているのかもしれない。

Nikkei Asian Review(http://asia.nikkei.com)にこの記事の英語版「Ken Kutaragi: The year of the Internet of things」を掲載しています。

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