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「もはや倉庫ではない」ヤマトHDの羽田物流ターミナル

 ヤマトホールディングス(HD)の次世代型物流施設「羽田物流ターミナル」が、東京国際空港(羽田空港)に隣接する敷地で2011年の年明けに着工する。設計は日建設計、施工は鹿島が担う。総事業費は約1400億円だ。グループ会社10社が入居し、新たな物流ビジネスを生み出す拠点となる施設を解剖する。

ヤマトは、シンガポールや中国・上海での宅配事業に本腰を入れている。国内市場には従来のような右肩上がりの成長が見込めないからだ。そこで必要となるのが国内外をつなぐ拠点施設だった。

荏原(えばら)製作所から羽田工場の跡地を845億円で取得したのが2007年。羽田空港に隣接し、大井コンテナ埠頭から近く、首都高速道路へのアクセスも良好。最高の立地に建てる延べ面積約20万m2の「羽田物流ターミナル」は、ヤマトで最大規模の施設となる。11年1月に着工し、12年10月の稼働を目指す。

ただし、この施設を単なる巨大な「倉庫」と見ては、その位置付けを見誤る。国内外のモノの流れを集約し、グループの事業をパッケージ化することで、新たなサービスを生み出す――。そんな物流ビジネスの"実験場"としての機能こそが、本質だからだ。

全長240mの物流棟の内部

6階建ての物流棟は、縦が114m、横が240m、高さ48.6mの巨大な直方体。延べ面積は約17万m2にもなる。11.4mの階高を確保した1階には、ヤマト運輸の「宅急便」の機能が入る。2階以上には企業間物流を担うヤマトロジスティクスなどが入居する見込みだ。

海外の工場で製造した部品と、国内工場で製造した部品をターミナルに集約し、組み立ての最終工程やセットアップなどを施して付加価値を高め、配送する――。グループ会社の連携でこんな事業も可能となる。事業の相乗効果を高めるため、「スパイラルコンベヤー」と呼ばれる設備で施設の機能を縦につなぐ。トラックで運んだ荷物を各階に搬入し、付加価値を高めた上で、スパイラルコンベヤーで1階に下ろし、宅急便の仕様で発送できる。

物流施設の設計では、建築と設備、情報システムの融合がカギだ。施設を設計した日建設計の五十君興・設計室長は「巨大な物流施設は海外にもあるが、異なる機能を積み上げてコンベヤーで一体化するのは、かつてない試みだ」と話す。

「光ボイド」で自然光を入れる

ワークプレイスとしての挑戦も盛り込んだ。特徴的なのが「光ボイド」だ。物流棟を縦に貫く9m角の穴を4カ所に設け、自然光を下階まで導く。現場をよく知るヤマトの担当者から、「せっかくの広いスペースに穴を開けるのは非効率だ」との声も上がったものの、閉鎖的になりがちな空間を開放的な仕事場に変える仕掛けとして採用した。

物流棟と事務棟では免震構造を採用した。地下の免震層は、物流棟1階の自然換気にも利用する。免震層を介して建物に外気を引き込み、光ボイドを通じて屋上から出す。

物流棟には見学コースを設ける。立地を生かして、日本で流通網を持たない海外企業などを招き、ヤマトの各事業を体感してもらってから、商談に持ち込むためだ。

ヤマトHD施設戦略担当の森信介マネージャーは「1カ所にグループ会社の事業がそろっていれば『事業の掛け合わせでこんなことができる』といった提案もしやすい」と説明する。ヤマトはこうした次世代型の施設を必要な拠点に整備する方針。羽田のターミナルほどの規模ではないものの、グループ数社が入居する物流施設が増える可能性がある。羽田物流ターミナルについてのさらなる詳細情報は日経アーキテクチュア2010年11月22日号を参照してほしい。

(日経アーキテクチュア 木村駿)

[ケンプラッツ 2010年12月3日掲載]

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