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ソフトバンクとは別モデル ドコモと組むディズニーの思惑

ジャーナリスト 石川 温

NTTドコモはウォルト・ディズニー・ジャパンと協業し、「ディズニーモバイルオンドコモ」と呼ぶブランドでサービスを展開する。ディズニーはこれまでソフトバンクモバイルから回線を借りて独自ブランドのサービスを提供してきたが、ドコモとは異なるモデルでサービスを展開する方針を打ち出した。今回のディズニーとドコモの発表は、ブランドを持つ企業と携帯電話会社が連携するモデルの大きな転換点になるかもしれない。

ターゲット、端末、料金プランが異なる

NTTドコモがディズニーとミッキースマホ。有機ELディスプレー、映画の無料配信も

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2月1日にNTTドコモは、ディズニーモバイルの新型スマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)を2月下旬以降出荷することを発表した。

ディズニーモバイルは、ディズニーがソフトバンクモバイルから回線を借りてサービスを運営するMVNO(仮想移動体通信事業者)として2008年から提供している。今回NTTドコモとも連携することにより、2つの通信事業者で同じブランドが展開されることとなった。

ディズニーモバイルは「ディズニーの世界観を体験できる携帯電話」で充実したコンテンツが楽しめるという意味では2社ともに共通のコンセプトだ。しかし扱われ方やサービス内容で2社にはいくつかの違いがある。

ターゲットでは、ソフトバンク版で20~30代の女性をターゲットにしているのに対し、NTTドコモ版ではそれらの女性に加えて幼い子供を持つ母親も取り込みたいとしている。

端末のメーカーも違う。ソフトバンクモバイル版は開発をシャープが請け負っているが、NTTドコモ版は富士通とパナソニックモバイルコミュニケーションズが開発する。

料金プランでは、「ホワイトプラン」をベースにしたソフトバンク版が相手がソフトバンクの網内無料通話が使えるのに対し、ドコモ版は従来と同じドコモの料金プランが適用される。NTTドコモの永田清人執行役員マーケティング部長は「いまのラインアップではそのような差が生じるが、将来的に(ドコモのLTEサービスである)Xi対応スマホを投入すれば(Xiトーク24が適用され)、網内定額も実現できるだろう」とした。

会見に登場したウォルト・ディズニー・ジャパンのデービッド・ミルスタイン氏とNTTドコモの永田清人執行役員

 ドコモはディズニーブランドの端末で「今後の2年間で100万台の販売が目標」(永田氏)としており、新製品を継続的に投入していく構えを見せた。12年年末もしくは13年春モデルでXi対応のスマホが登場する可能性がありそうだ。

ドコモユーザーにはディズニーリゾートで特典

コンテンツ面では、ドコモ版はディズニーの映画やドラマなど長時間の映像コンテンツを視聴できるようにした。NTTドコモのネットワークインフラを生かし、第3世代携帯電話(3G)回線でも視聴できる。インフラの弱さを指摘されるソフトバンク版に比べて優位性を打ち出した。

本来ならば、KDDIが米アップルの「iPhone」を発売したときのように、NTTドコモも良質なネットワークをアピールしたかったようだが、「1月25日の大規模障害があって断念した」(NTTドコモ関係者)。年末年始に多発したネットワークトラブルは、今後しばらくドコモのプロモーションに影響を与えそうだ。

ディズニーモバイルで後発となるNTTドコモは、東京ディズニーランドと東京ディズニーシーでの特典提供をアピールしていく考え。「東京ディズニーリゾート内で、ディズニーモバイルオンドコモのユーザーだけが得られる体験を提供したい」と永田氏はいう。

その背景には、「NTTドコモがディズニーランドとディズニーシーのオフィシャルスポンサーである点が大きい」(ウォルト・ディズニー・ジャパン ディズニー・インタラクティブ・メディア・グループのデービッド・ミルスタイン・ゼネラルマネージャー)。詳細は春以降に明らかになるが、ドコモ版ユーザー向けにはアトラクションに優先的に乗れる「ファストパス」のような特典を期待したいところだ。

影落とすソフトバンクのiPhoneの販売戦略

今回の発表を受けて気になったのが「なぜディズニーはドコモとパートナーを組んだのか」という点だ。ミルスタイン氏は「ソフトバンクのMVNOは順調に伸びている。新製品も先ごろ投入したばかりだし、今後も継続的に販売していく」という。それでもドコモと協業したのは「幅広いユーザーにコンテンツを提供したい」(同氏)という理由が大きいと説明する。

これに対してドコモの関係者は「ソフトバンクとの関係だけでは、成長の余地がないとディズニーは判断したのではないか」と推測する。MVNOとはいっても、実際はディズニーモバイルの端末はソフトバンクショップで扱われ、カタログにも掲載されるなど、ソフトバンクのラインアップのひとつに位置づけられてきた。

 だがソフトバンクモバイルは、iPhoneに集中して販売奨励金を積み、KDDIとの攻防戦を繰り広げている。特別キャンペーンとして、iPhoneの機種変更費用に300億円以上もつぎ込んだという。

ディズニーモバイルの端末が発売されたのは08年3月で、iPhoneは08年7月から販売されている。それからソフトバンクはiPhoneを前面に押し出した販売戦略を立ててきた。ディズニーとしてもソフトバンクと組むだけでなく、幅広い商品をそろえるドコモのラインアップに加わった方がメリットが大きいと判断したようだ。

狙いはコンテンツビジネスへの注力か

これまでディズニーはソフトバンクのMVNOという立場だったため、通信料金などの収入を得られてきた。ドコモとの関係ではMVNOではないため、通信料金などの収入は当然ながら発生しない。それでもドコモと組むにあたって「ラインアップのひとつ」になったのは、「MVNOなら本来は、プロモーションなども自分でやらなくてはいけない。それよりも得意分野であるコンテンツ提供に注力したかったのではないか」とドコモ関係者は語る。

ドコモ版では、3月開局の無料BSテレビ局「Dlife」と同じ名前の映像コンテンツが配信される。ディズニーにはドコモと組むことでユーザーを拡大し、コンテンツへの接触機会を増やして、BSテレビ局の視聴者増につなげたいという狙いもある。

ディズニーという熱烈なファンがいるブランドが、今回MVNOモデルを選ばなかったことのインパクトは大きい。ソフトバンクとの約4年の連携で、MVNOにはならなくても本来の目的を実現できると学んだのかもしれない。

日本市場では、データ通信に特化する日本通信などがMVNOモデルを有効に機能させている。通話も絡む携帯電話やスマホでMVNOモデルを実践してきたディズニーの選択は、改めてこのモデルの難しさを浮き彫りにした格好だ。

石川温(いしかわ・つつむ)
 月刊誌「日経TRENDY」編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。近著に「スティーブ・ジョブズ 奇跡のスマホ戦略」(エンターブレイン)など。ツイッターアカウントはhttp://twitter.com/iskw226

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