2019年6月26日(水)

甘ったれるな! 中年  養老孟司さん

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2012/6/6 7:00
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──老後のおカネが不安という方が多いのですが、リタイア後に向けての資産運用はしていますか?

貯蓄は苦手で、結婚するまで貯金は一銭もありませんでしたし、今もあると使ってしまうタイプ。この年齢になってもこんなに忙しいのは、好きなことをする時間のために稼ぐ時間をあんばいしなくちゃいけないからです(笑)。

養老孟司(Takeshi Yoro)さん
作家・東京大学名誉教授。74歳  1937年鎌倉市生まれ。東京大学医学部を卒業、解剖学教室に入る。1995年東京大学医学部教授を退官し現職。趣味は昆虫採集で、2005年に建てた箱根の別荘は「養老昆虫館」。(撮影:大槻純一)

養老孟司(Takeshi Yoro)さん
作家・東京大学名誉教授。74歳  1937年鎌倉市生まれ。東京大学医学部を卒業、解剖学教室に入る。1995年東京大学医学部教授を退官し現職。趣味は昆虫採集で、2005年に建てた箱根の別荘は「養老昆虫館」。(撮影:大槻純一)

けれども世代的に、将来のおカネに対する不安というのは全く感じませんね。なぜかというと、おカネの価値が完全に破裂してしまった時代を知っているからです。

うちの父は戦争中、昭和17年に結核で死にましたが、僕の大学の学費を賄えるだけの保険金を残してくれました。ところが戦争に負けた後、猛烈なインフレが起こり、さらに新円への切り替えがあって、それまでのおカネはあっという間に全部紙くずになってしまった。

当時僕は小学校低学年で、自分でおカネをどうこうする年齢ではありませんでしたが、「おカネなんてあてにならない」ってことは肌身に染みて理解しました。おカネとは要するに人間が作った約束事、ためてもいざというときにどうなるかは分からない。ならば天下に回しておけばいいっていうのが僕の考え方です。

■何のために生きるのか、中年になってこそ自問を

──「おカネがあれば安心」という感覚がそもそも違うと。

昭和20年8月15日を境に価値観ががらりと変わってしまう経験をしましたから、人間の意識なんて頼りにならないというのが根本にあります。客観的な事実なんてものも、この世にないんですよ。僕がよく受ける質問が、「先生は1日に何本たばこを吸いますか?」です。なぜそんなことを数えなきゃならないんだと。答えをいったからって何かが分かるのかと。むしろそんなものは数える方が体に悪いでしょう(笑)。おカネの話もそれと同じで、1億円持っている、だから何なんだと。

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