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アンドロイドのアプリはiPhoneに追い付くか

ゲームジャーナリスト 新 清士

グーグルの携帯電話向けOS「Android(アンドロイド)」を搭載するスマートフォンが出そろい始め、アップル「iPhone」との対決がいよいよ本格化する。アンドロイド普及のカギは、スマートフォンの最大の特徴であるアプリケーションがどれだけ充実するかにあるが、現在のアプリ市場には課題が多い。

「(携帯電話向けアプリ市場は)爆発寸前。ぜひ大挙して進出してほしい」。11月1日、アプリ開発者向けのイベント「アンドロイドやろうぜ!byGMO」で、GMOインターネット会長兼社長の熊谷正寿氏はこう呼びかけた。

同社はアンドロイド向けのゲームアプリ配信サービス「@GMOゲームセンター」を11月26日に開設する。熊谷氏は「数年後にはアンドロイド端末が最大のプラットフォームになるのではないか。今ある携帯用ゲーム機は2~3年後には、アンドロイドに変わっていくだろう」と述べた。

違法コピー対策などが不十分

NTTドコモが10月28日に発売した韓国サムスン電子製の「ギャラクシーS」が好調な滑り出しを見せるなど、アンドロイド搭載端末への関心はNTTドコモ、KDDIのユーザーを中心に高い。ただ、アンドロイド向けアプリ市場に対するアプリ開発者の評判は必ずしもよくない。

グーグルはアップルのアプリ配信ストア「AppStore」に相当するサービスとして「アンドロイドマーケット」を運営している。アンドロイドマーケットのアプリ登録数は10万本台と、数の上ではAppStoreの約30万本を追い上げているが、アプリ販売で収益を上げる成功例がなかなか増えてこないためだ。

理由の一つに、デジタル著作権管理(DRM)対策が十分になく、公開したアプリを違法コピーされやすいという問題がある。「中国では登録されたゲームがDVDにまとめられて販売されるというケースも見られる」(熊谷氏)といい、ゲーム開発会社が参入を躊躇する要因になっている。アプリを審査するプロセスもないため、知的財産の侵害とみられるような行為も激しい。

 アンドロイドマーケットの「キャンセルポリシー」への不満も多い。これは購入後24時間以内であればお金を払わずに返品できるというものだが、ゲームの場合は一晩もあればクリアできるタイトルが多く、実際にキャンセルが多発しているという。

今後はハードウエアの多様化が重大な問題となりそうだ。すでに画面サイズの異なるスマートフォンがいくつも登場しており、仕様の違いに合わせてアプリを複数開発するなどの必要が出てくる。これらの結果、アプリの質や量が見劣りするという状態が長く続くようであれば、アンドロイド搭載スマートフォンの売れ行きにも影響しかねない。

「私設市場」で問題は解決するか

GMOインターネットが独自のアプリ配信サービスとして開設する@GMOゲームセンターは、アンドロイドマーケットのこうした問題点に対応することでアプリ開発者を取り込もうとしている。例えば、違法コピー防止のため独自のDRM機能を用意するほか、キャンセル対策も施す。GMOがアプリを事前審査することで、アイデアのパクリなども防ぐという。

また、アプリ開発者向けに「VIVID Runtime」と呼ぶ開発ツールを提供し、画面サイズなどの違いを自動で調整できるようにする。来年初めには、iPhone向けの開発言語である「Objective-C」を変換する機能もリリースする予定。アンドロイド向けアプリは主に「Java」で開発され、iPhone向けアプリとは親和性が低いが、このツールを使えばiPhone向けアプリからの移植が簡単になるという。

では、こうした独自サービスの登場はアンドロイド向けアプリ市場をどの程度活性化できるのだろうか。

GMOインターネットのイベント会場でゲーム開発者の声を聞いたが、まだ多くは半信半疑のようだった。例えば、一定数のユーザーをどう配信サービスに誘導するのか、違法コピーされた無料アプリが氾濫するなかで有料アプリをどう買ってもらうのかなど、不確定要因が多い。

無視できないプラットフォームだが・・・

海外展開も課題となる。GMOインターネットは海外携帯電話会社と交渉に入っているとしているが、現時点では韓国SKテレコムが協賛しているにとどまる。アプリ販売は単価が低く、海外販売で量を稼ぐことが重要となるが、世界市場のどの程度をカバーできるかは未知数だ。

アンドロイド向けのアプリ販売サービスはすでに、NECビッグローブが今年8月に「andronavi(アンドロナビ)」を正式開設しているほか、ベクターも10月に「AndroApp」を立ち上げた。ディー・エヌ・エー(DeNA)、グリーなどのソーシャルゲーム系企業もいずれ進出してくるとみられるが、「私設市場」の乱立でかえってユーザーには不便になる可能性もある。

1日のイベントでは、すでにアンドロイド向けアプリ市場に参入している大手ゲーム会社の担当者によるパネルディスカッションが開かれた。そのなかで、カプコン開発統括本部MC開発部プロジェクト企画室プロデューサーの伊藤幸正氏は、「アンドロイドはプラットフォームとして無視できなくなってきた」と述べる一方、AppStoreでアップルが果たしているような旗振り役の不在を挙げ、「その点がはっきりしないと、台数は出るがブラウザーとメールだけ(しか使われない端末)になる可能性もある」と指摘した。

看板タイトル「パックマン」をアプリ化しているバンダイナムコゲームス第2スタジオマーケティング企画部マーケティング企画2課アシスタントマネージャーの山田大輔氏は、「自社のタイトルと見分けがつかないほどそっくりコピーされたアプリがある」と現状を報告しつつ、ゲーム会社側もダウンロード販売だけで終わるビジネスから脱却して「パックマンにもソーシャル性を持たせるなど、新しいモデルに対応していく必要がある」と語っていた。

アプリ市場を繁栄させる近道

日本のベンチャー企業や個人開発者はこれまで、AppStoreやアンドロイドマーケット以外のアプリ販売プラットフォームを見つけるのが容易ではなかった。その点で、日本企業が運営する配信サービスが増えることには、選択肢と成功のチャンスが広がるという意味がある。

ゲーム開発の敷居が下がれば、既存のゲーム会社だけでなく、今までにないアイデアを持つ無名の開発者が評価される機会も生まれやすくなる。GMOインターネットのアンドロイドやろうぜ!byGMO推進室室長代行であるアンディ・クォン氏は、「多くのアマチュア開発者にも機会を提供したい」と語ったが、アプリ市場を繁栄させるには時間をかけて開発者の裾野を広げ、収益を十分に還元していくことが一番の近道だろう。

新清士(しん・きよし)
 1970年生まれ。慶應義塾大学商学部及び環境情報学部卒。ゲーム会社で営業、企画職を経験後、ゲーム産業を中心としたジャーナリストに。国際ゲーム開発者協会日本(igda日本)代表、立命館大学映像学部非常勤講師、日本デジタルゲーム学会(digrajapan)理事なども務める。

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