「人工脳」で速度はPCの9000倍 スタンフォード大

2014/5/2付
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日経エレクトロニクス

開発した「Neurogrid」(写真:Stanford University)

開発した「Neurogrid」(写真:Stanford University)

米Stanford University(スタンフォード大学)は、同大学のバイオ系の技術者が、人間の脳の回路を模した電子回路基板「Neurogrid」を試作したと発表した。既存のパソコンなどより9000倍高速に動作し、それでいて消費電力はパソコンよりかなり低いという。ヒト型ロボットや、義足の制御などへの利用を目指しているとする。

Neurogridは、「Neurocore」と呼ぶ専用ICを16個用いている。これらのICで、約105万本の"ニューロン(神経細胞)"と数十億個の"シナプス"の動作を再現できるという。同ICは、「約15年前の半導体技術で作製した」(同大学)。およそ180ナノメートル(nm)世代のプロセス技術だとみられる。

開発費は4万米ドル(約408万円)。Neurogridの開発を主導したStanford Unviersity、Associate professor of bioengineeringのKwabena Boahen氏は「最新の製造プロセスなどを利用できれば、製造コストを10分の1の400米ドルにできる」とする。

ニューロンやシナプスから成る回路の再現は、米IBMなどもビッグデータへの活用を視野に研究しており、2011年8月に45nm世代のプロセス技術でコグニティブ・コンピューティング・チップ、または「Golden Gate(開発コード名)」と呼ぶICを発表している。このICは、256本のニューロンと6万個超、または26万個超のシナプスを実装していた。

今回、古い世代のプロセス技術で、IBMなどよりずっと多いニューロンやシナプスをICに実装できた理由は、「少数の回路で多数のシナプスの動作を再現する戦略が奏功した」(同大学)からだという。この戦略は特に、ICの低消費電力化に貢献したとする。

■世界で進む脳のIC化研究

世界では、人間の脳の動作を研究するプロジェクトがいくつも進められている。米国では、Stanford Universityなどが参加する「BRAIN(Brain Research through Advancing Innovative Neurotechnologies) Project」や、IBMの「SyNAPSE(Systems of Neuromorphic Adaptive Plastic Scalable Electronics) Project」などがある。

欧州では、欧州連合(EU)の「Human Brain Project(HBP)」があり、スーパーコンピューターを用いた脳の動作の再現や解析などを中心に研究を進めている。

その中で、ドイツHeidelberg University(ヘイデルベルグ大学)は「BrainScales(Brain-inspired multiscale computation in neuromorphic hybrid systems) project」を進めており、アナログ回路でニューロンやシナプスを再現する研究開発に取り組んでいる。既に、最大512本のニューロンと12万8000個のシナプスを再現したIC「HICANN(High Input Count Analog Neural Network)」を開発した。

(日経エレクトロニクス 野澤哲生)

[日経テクノロジーオンライン 2014年5月1日掲載]

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