2019年8月26日(月)

日米外交60年の瞬間 第3部

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毛沢東、スターリンが電報交換 サンフランシスコへ(53)
日米外交60年の瞬間 特別編集委員・伊奈久喜

2012/8/18 7:00
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サンフランシスコを横目でにらむかのように、1951年9月2日の新華社電は、サンフランシスコ講和会議を揺さぶるソ連と中国の動きを伝えた。毛沢東主席がスターリン首相に電報を送り「日本侵略勢力の再起をはばむ中ソ同盟は中国人民の反侵略闘争に無限の激励となっている」と述べた。

■ソ連の不法性薄める9月2日終戦論

スターリン首相=共同

スターリン首相=共同

スターリンは返電で「ソ連と中共の強固な友好関係は、現在、将来にわたって極東平和を保障し、一切の侵略者に反対する力となることは疑いない」と述べた。スターリンの返電は同日付けで打たれており、中ソ蜜月をみせつけている。

それにしても中ソ首脳の電報によるメッセージ交換がなぜ9月2日なのか。

サンフランシスコをにらんだのは間違いないが、それだけではない。中ソ両国にとってこの日は、「対日戦勝利6周年」だったからだ。

6年前の9月2日に何があったのか。いうまでもない。ミズーリ艦上での降伏文書への署名である。日本人にとって第2次世界大戦が終わったのは8月15日だが、中ソ両国にとってはそうではない。9月2日なのだ。

8月15日か9月2日か、日本にとっては実質と形式との違いにすぎないように思われがちだが、ソ連にとってはそうではない。8月15日ではソ連にとって都合が悪いのだ。いや9月2日でも、ソ連にとっては都合が悪いのかもしれない。

1945年8月から9月にかけてのソ連の不法行為を「2010年版われらの北方領土」(外務省)は次のように書く。

毛沢東主席=朝日新聞社提供

毛沢東主席=朝日新聞社提供

「ソ連は、1945年8月9日、当時まだ有効であった日ソ中立条約を無視して対日参戦しました。そして、8月14日に日本がポツダム宣言を受諾し降伏の意図を表明した後の8月18日、カムチャツカ半島から第2極東軍が進撃して千島列島の占領を開始し、31日までに千島列島の南端であるウルップ島の占領を完了しました。これとは別に、樺太から進撃した第1極東軍は、当初北海道の北半分(釧路・留萌ライン以北)及び北方4島の占領を任務としていましたが、前者につき米国の強い反対があったためこれを断念するとともに、米国の不在が確認された北方4島に兵力を集中し、8月28日から9月5日までの間に択捉島、国後島、色丹島及び歯舞群島のすべてを占領してしまいました」

北方領土問題については、これからもたびたび触れることになるが、ここで確認しておきたいのは、ソ連が終戦の日を8月15日ではなく、9月2日とするのは、北方領土占領の不法性を薄めるためである。ちなみに「われらの北方領土」によれば4島の占領完了は9月5日だから、9月2日が終戦日であっても、不法性は残る。

そしてそもそも8月9日以降のソ連の行動全体が日本からみれば、日ソ中立条約違反である。

■激闘続く朝鮮戦線

1951年
4月11日
トルーマン大統領がマッカーサー元帥を連合国最高司令官、国連軍最高司令官、米極東軍・極東陸軍総司令官から解職。後任にリッジウェー中将
4月16日ダレス特使再来日
6月20日日本政府、第1次追放解除を発表
8月6日日本政府、第2次解除を発表。鳩山一郎ら追放解除される
9月1日米、オーストラリア、ニュージーランド、太平洋安保条約に調印
9月4日サンフランシスコ講和会議始まる
9月8日吉田首相、対日講和条約、日米安全保障条約に調印
12月24日吉田首相、ダレスに台湾の国民政府との講和を確約(「吉田書簡」)

スターリン、毛沢東は、当然ながら、朝鮮半島の戦況にも神経をとがらしていた。国連軍側の発表によれば、という条件付きではあるが、ふたりの電報交換から一夜明けた3日、朝鮮の中部戦線では共産側が猛攻を加え、国連軍はこれを撃退した。中部戦線では海抜1000メートルの山岳地帯で激戦があった。

一方、ワシントンでは米下院歳出委員長のマホン議員が2日、原爆誘導ロケット弾の生産に10億ドルを使うと表明した。

東京では社会党青年部の大会が2、3日の両日開かれ、サンフランシスコ講和条約の批准反対を決議した。社会党青年部は中ソの側に立っていた。サンフランシスコをめぐって世界が東西に二分されていたように、日本国内も二分されていた。

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