日米外交60年の瞬間 第3部

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マッカーサーが再軍備の勧め サンフランシスコへ(43)
日米外交60年の瞬間 特別編集委員・伊奈久喜

2012/6/9 7:01
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1951年8月23日、対日講和をめぐって様々な動きがあるなかで、この物語の第1章の主役が再び顔を出した。マッカーサー元帥である。

マッカーサーは吉田茂首相あてに書簡を送り、そのなかで日本の再軍備を求めたのである。吉田は話が違うと思ったかもしれない。

■吉田に冷や水?

マッカーサーはこう述べる。

「対日講和条約の条項に基づいて日本国民は今後、共産主義との闘争において自由世界の陣営に参加することになるであろう。国際共産主義の邪悪と前進は、国内平和と国家の安全を脅かすものとして断固撃退しなければならない。このような目標に向かってアジアに国際的緊迫状態が存在する限り、日本はあるゆる外部からの攻撃の脅威に対抗して日本の国内平和を守るためには適当な安全保障の兵力を持つべきである」

1951年
4月11日
トルーマン大統領がマッカーサー元帥を連合国最高司令官、国連軍最高司令官、米極東軍・極東陸軍総司令官から解職。後任にリッジウェー中将
4月16日ダレス特使再来日
6月20日日本政府、第1次追放解除を発表
8月6日日本政府、第2次解除を発表。鳩山一郎ら追放解除される
9月1日米、オーストラリア、ニュージーランド、太平洋安保条約に調印
9月4日サンフランシスコ講和会議始まる
9月8日吉田首相、対日講和条約、日米安全保障条約に調印
12月24日吉田首相、ダレスに台湾の国民政府との講和を確約(「吉田書簡」)

再軍備の勧めである。

マッカーサー書簡は、7月13日に講和条約草案全文が公表された際に吉田が送った感謝の書簡に対する返答だった。吉田はこれを読んで「あれから7カ月もたっていない」と感じただろう。

51年1月29日、吉田は訪日したダレスとの最初の会談で、再軍備を求めるダレスと衝突した。気まずい会談の後、ふたりはマッカーサーを訪ねた。

マッカーサーはダレスの方をみて「自由世界が今日、日本に求むるものは、軍事力であってはならない」と述べた。再軍備に反対する吉田の肩を持ったのである。

それが正反対の意見を送ってくるとは……。もはや東京の帝王ではなかった。米国からアジアを見る視点に変わったのだろう。

マッカーサー書簡には直接関係があったかどうかはわからないが、朝鮮での休戦交渉が23日、暗礁に乗り上げた。

■共産側、朝鮮交渉の中断を通告

朝鮮人民軍総司令・金日成と中国人民義勇軍総司令・彭徳懐は、リッジウェー国連軍最高司令官にメッセージを送り、23日以降の会議を停止すると通告してきた。21日午後10時20分(現地時間)に発生したとされる米機による開城(ケソン)中立地区での爆撃を理由にした。

このニュースは24日午前1時15分の北京放送によって東京にもたらされたが、国連軍は当然ながら、事前に通告を受けていたから、北京放送による公表の約1時間前に先手を打つ形で特別発表をした。東京時間24日午前0時、総司令部(GHQ)の特別発表の形で爆撃事件にかんする調査結果を発表したのである。

それによれば、共産側が主張する22日午後11時20分(東京時間)には、ケソン上空には飛行機は1機もいなかったとしている。極東海軍司令部も、海軍機は作戦行動をとってなかったとした。

平壌放送も「われわれは国連軍司令部が中立地帯侵犯事件に対し満足すべききまじめな回答をしない限り、これを国連軍側が休戦会議の続行を欲していない証拠と考える」と述べた。

事件の有無とは別に、新たな問題を突然持ち出し、回答に満足がいかなければ、会談の場を去ると表明する。これから後も何回も何回も繰り返される北朝鮮の手法である。

核問題などをめぐる6カ国協議でも北朝鮮は、参加の条件として食糧支援などを求めてきた。「参加カード」戦術といわれる手だが、60年前からそれを使っていたのである。

■講和後まで交渉延期ねらう意図か

米政府は、共産側の意図を「共産側の攻撃再開の信号」と受け止めた。英国の首相官邸筋が米国の意向を代弁する形で次のように語っている。

「われわれは共産側が休戦会議を全面的攻撃準備のための煙幕に使っているのではないかと長い間、疑ってきた。共産側は対日講和会議後まで交渉を延期させることをねらったに違いない。共産側はパリの外相代理会議から朝鮮の休戦会議へと舞台を変えたが、さらにサンフランシスコに持って行こうとしているのだろう」

激しかったのは言葉だけではなかった。23日夜の新華社電によれば、あくまで新華社電によれば、ではあるが、国連軍は18日以降、東部戦線で大規模な攻勢にでているとされた。中部戦線でも激戦が展開されているとされた。

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