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シャープが明かした、サスティナブル社会に向けた技術開発

持続性のある社会を実現するために求められる技術とは何か――。シャープ 取締役 専務執行役員 技術担当 兼 知的財産権本部長の太田賢司氏は,「サスティナブル社会に向けた新たな技術開発」と題して,SEMIジャパン主催の「SEMI Forum Japan 2010」(5月31日~6月1日,大阪国際会議場)において講演した。同氏はこの中で,同社の今後の技術開発テーマとして「エネルギー・マネジメントと高齢化社会への対応」を挙げ,そこに必要なデバイス開発の一端を示した。

講演するシャープ 取締役 専務執行役員 技術担当 兼 知的財産権本部長の太田賢司氏。著者が撮影

シャープが進む方向の一つとして太田氏が挙げたのが,"省エネ"と"創エネ"を組み合わせた「エコ・ハウス」である。

同氏によると,創エネのデバイスとして同社が注力している太陽電池だけでは,サスティナブル社会に向けた貢献としては不十分だという。「地球環境に与える影響を様々な指標から見ると,太陽光発電だけでは全体に与える影響が小さい」(太田氏)ためである。そこで,自社の活動がより大きく貢献できるテーマとして,「エコ・ハウスにおけるエネルギー・マネジメントを掲げている」と述べた。

エコ・ハウスでは,住宅内に太陽光発電システムと蓄電池システムを組み合わせて導入し,日中に太陽光発電システムで発電した電力を夜間にも使えるようにする。"オール・エレクトロニクス・マネジメント・システム"とし,蓄電池システムとして電気自動車の導入も想定している。

同氏がモデルとして示した試算によると,一般的な家庭で使う電力は年間7.5MWhである。この数値には,灯油やガスなどの使用量を電力として換算した分を含む。この家庭に,3.5kWの太陽光発電システムと6kWの蓄電池システムを導入する。これによって,まず,電力を47%節約できる。

これに加え,(1)住宅で使用する電力をすべて交流(AC)から直流(DC)に置き換えてAC-DC変換時の損失を無くすこと,(2)電子機器の省電力化,(3)HEMS(home energy management system)の導入,(4)住宅の断熱性の向上,の四つによって,さらに92%節電できるとする。

同社は,この構想に基づき,既存の住宅を使った実証実験を2009年に実施した。液晶テレビを使った三つの仕掛けによって,居住者がこまめに電力の消費を抑えた結果,開始わずか2週間で約20%の省エネを実現したとする。この仕掛けとは,家庭内の電力使用状況をテレビに表示して「見える化」したこと,リモコンを使ってテレビを通じて操作できる家庭内の他の機器の省電制御,テレビを使ったナビゲーションによる注意力の喚起である。

ただし,こうしたエコ・ハウスは,一般的な家庭に導入しても採算が合わないという。そこで,同社は一定地域内をネットワーク化した"スマート・コミュニティ"を形成し,エレクトロニクスを使ったエンターテインメントや健康管理など,別の要素を融合したサービスをコミュニティ全体に提供することを構想している。同社では,予防医療や介護といった高齢化社会に対応した健康管理サービス向けに,人体や環境の動きを監視するセンシング・デバイスを開発している。

同氏が将来のエコ・ハウス向けに開発している具体的なデバイスとして挙げたのは,量子ドット構造を活用してバンド・ギャップを広げた太陽電池,バイオマスを使った水素エネルギー・デバイス,窒化ガリウム(GaN)によるパワー半導体,である。

このうち,バイオマスを使った水素エネルギー・デバイスは,新たな再生可能エネルギーによる電力の活用に向けた取り組みとなる。バイオマスによる水素の生成法の課題を克服するため,化学反応による水素の生成などを模索しているという。

GaNによるパワー半導体については,耐圧などの課題を克服中であり,「まだ完璧(ぺき)な動作を実現できていない」(太田氏)という。GaNを選択した理由は,電子移動度の高さ,絶縁破壊に対する耐性,シリコン(Si)上に結晶を成長させられる可能性にある。

(テクニカル・ライター 加藤伸一)

[Tech-On! 2010年6月1日掲載]

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