2019年6月27日(木)

「ボタン電池の置き換え」狙う小型振動発電機を金沢大が開発

2010/12/1付
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金沢大学 准教授の上野敏幸氏は,小型ながらも大きな電力が得られる振動発電機を開発した(図1)。外形寸法は約2mm×3mm×12mmと小さく,357Hzの振動時における発電量は1.56mWと大きい。体積当たりのエネルギー密度は約22mW/cm3と計算できる。一般に,小型振動発電機のエネルギー密度は1mW/cm3程度といわれており,開発品は約20倍以上もの発電量となる。「ボタン電池の置き換えを十分に狙える」(上野氏)とし,自動車のタイヤ空気圧警報装置(TPMS)や携帯機器などに向けたいとする。

図1 磁歪効果を利用した小型振動発電機

図2 バイアス磁化を与えるため,磁石を取り付けてある

開発品では,発電素子として,大きな磁歪(じわい)効果を有するFe(鉄)とGa(ガリウム)の合金である磁歪材料「Galfenol(Fe81.4Ga18.6)」を用いた。磁歪効果とは,磁化すると形状が変化する現象のこと。Galfenolの場合,300ppm程度(仮に1kmの棒と考えると,300mm伸びる計算)の磁歪効果が生じる。発電には,磁歪効果の逆の現象といえる逆磁歪効果を利用する。逆磁歪効果とは応力を加えることで磁化が変化する現象を指し,Galfenolの場合,圧縮応力を加えることで最大1T以上,磁束密度が減少するという。磁束が変化すると誘導電圧が発生する。Galfenolは1998年に米Naval Research Laboratory(海軍研究所)が開発した比較的新しい材料。「Galfenolを用いた振動発電機は今回が初めて」(上野氏)だという。

Galfenolの特徴としては,大きな磁歪効果を有することに加えて,延性材料である点が挙がる。このため機械加工がしやすく,ひずませても壊れにくい。振動発電によく使われる圧電素子はセラミックスで,これは脆性(ぜいせい)材料となる。また,大きな磁歪効果を有する材料として,Tb(テルビウム)とDy(ジスプロシウム),Feから成る超磁歪材料「Terfenol-D」(磁歪効果は1000ppm程度)もあるが,これも脆性材料である。

今回,上野氏はGalfenolが延性材料である特性を生かして,小さいながらも発電量が大きくなるような構造を考えた。具体的には,二つの細長い磁歪素子の一端を固定し,もう一端におもりを付ける平行梁構造とした。磁歪素子に細い電線を巻いてコイルとし,電力を取り出せるようにしてある。ここで,おもりが上下に振動すると,二つの磁歪素子に曲げ変形が生じる。このとき一方の素子には圧縮力が,もう一方には引っ張り力が作用する。おもりが上下に動けば,素子には圧縮力と引っ張り力が交互にかかることになり,これに応じて磁束も周期的に変化する。この時間変化によってコイルに誘導電圧が発生し,電力を効率的に取り出せる。「Galfenolが延性材料であるため,細い棒状とした構造としても壊れにくい」(上野氏)という利点を生かした。なお,磁歪素子の外形寸法は1.0mm×0.5mm×10mmとなり,素子にバイアス磁化を与えるため直径2mm×長さ2mmの磁石を取り付けてある。

また,Galfenolには温度特性が良いという特徴もある。キュリー温度が700℃程度と高く,「-200~200℃程度の範囲内では性能はそれほど大きく変化しない」(上野氏)という。このため,環境変化の激しい場所にも適しているとする。

(日経エレクトロニクス 清水直茂)

[Tech-On! 2010年11月30日掲載]

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