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世界で600超の都市プロジェクト 人口集中の問題解決へ

世界的に都市部への人口集中が続いている。都市化率(都市部に住む人口の割合)は、先進国では2010年時点ですでに70~80%に達しており、2050年には90%と大部分が都市に住むことになる。

アジア・アフリカ地域は2010年時点では50%以下だが、都市への人口集中の速度は先進国を上回っており、2050年にはアジアは65%、アフリカでも60%近くまで都市化が進むと推計されている(国連統計)。それに伴い深刻化してきたのが、住環境の悪化や交通渋滞であり、地球環境面でも負荷が大きくなっている。

こうした都市化に伴うさまざまな問題を解決する動きが世界に広がっているが、ポイントは技術だけでなく社会システムやあり方そのものを変え、新しい社会・ビジネスモデルを創造することである。日経BPクリーンテック研究所の『次世代社会創造プロジェクト総覧』(2013年6月28日発行)によると、こうした課題を解決するための新しいモデルの創造を目指すプロジェクトは、全世界で608に上ることが分かった。

図1  608ある都市の課題解決プロジェクトの地域・国分布(図:日経BPクリーンテック研究所)

プロジェクト数は都市建設急務の中国が突出

608プロジェクトの国・地域別の内訳をみると、ダントツは中国で225ものプロジェクトが走っている。続いて、北米124、欧州91、その他アジア78、日本63、アフリカ17、南米10と続く(図1)。

中国が多いのは、毎年1200万人もの人々が農村から都市に流入していることから、課題を解決できる持続的な都市建設が急務だからである。北米や欧州は、エネルギーの安定供給や低炭素化のためのスマートグリッド関連のプロジェクトが多い。日本は低炭素化のプロジェクトに加えて、超高齢化社会に突入したことから高齢化対策のプロジェクトが増えている。

今回の調査で浮き彫りになったのは、中東やアフリカ地域で、都市開発のプロジェクトが増えていることだ(図2)。これらの地域では全体の都市化率は50%以下であるものの、首都など大都市への人口集中が急速に進んでおり、人口1000万人以上の「メガシティー」が登場してきている。そのため、交通渋滞や住環境の悪化、雇用不安、治安悪化、スラム化など都市機能が麻痺しかねない深刻な事態を招いている。

図2 サウジアラビアの都市開発例「ジーザーン・エコノミック・シティ」。25万人の住居と50万人の雇用を創出する(図:ジーザーン・エコノミック・シティ)

そこで、大都市近郊の未開拓地に衛星都市として、「快適な住環境の提供」と「新産業の育成と雇用確保」をセットで追求する新都市プロジェクトが増えているのである。

ステークホルダーが共同で最適なマスタープランを

このように世界で都市開発プロジェクトが増えているが、その際に重要なことは、自治体、住民、民間事業者といったステークホルダーが共同で、基礎インフラを整備し、低炭素化や自然環境保護、産業活性化・雇用対策、高齢化対策に取り組むマスタープランを作成することだ。

マスタープランの中核をなすのは公共交通機関の整備であり、「公共交通指向型開発(TOD:Transport Oriented Development)」やコンパクトシティー化が志向されている。公共交通指向型開発の典型例として知られているのは、ブラジルのクリチバ市の試みで、マスタープラン段階から道路と土地の区画整理を詳細に決め、バス専用レーンを計画的に整備して、市内どこでも行けるように利便性を上げた。

欧州では、ドイツのフライブルク・ボーバン地区開発プロジェクトがモデルケースと言われており、マスタープランの段階でLRT(次世代路面電車)とバス、自転車を優先してこれらでどこでも容易にアクセスできるようにし、市街地への自動車の乗り入れを規制した。新興国でも、新都市のマスタープランに、先進国の経験に学んで公共交通指向型開発、コンパクトシティー化、低炭素化などの要素を盛り込む例も出てきている。

都市としての価値をどう上げるか

こうした各都市に最適なマスタープランに基づいて都市開発をすることによって、都市としての価値、そして目に見える形としては不動産価値を上げる方向に持っていくことが重要になる。不動産価値が上がれば、自治体にとっては財政が健全化し、住民にとっては住環境の改善やQoL(生活の質)向上が図れ、民間事業者にとっては利潤確保により再投資が可能になるという好循環モデルが生まれる(図3)。

図3 都市開発の価値創造モデル(図:日経BPクリーンテック研究所)

すでに欧州ではこうした都市開発モデルが登場しており、日本でもこの方向を目指している。今後増える新興国でも、いかに都市としての価値を上げるかという視点が一層重要性を増していくだろう。

(日経BPクリーンテック研究所 藤堂安人)

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