2019年8月23日(金)

日米外交60年の瞬間 第3部

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ソ連の講和会議出席に激しい反応 サンフランシスコへ(39)
日米外交60年の瞬間 特別編集委員・伊奈久喜

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2012/5/12 7:01
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グロムイコのサンフランシスコ行きのニュースにワシントンは激しく反応した。サンフランシスコ講和会議は、名前とは逆に、形を変えた米ソ戦争だった。1951年8月13、14日に起きた出来事から、それがわかる。

■米当局者、ソ連の意図をあけすけに解説

皇居に向かい合って立つ第一生命ビル。連合軍総司令部が置かれていた

皇居に向かい合って立つ第一生命ビル。連合軍総司令部が置かれていた

米政府はソ連の意図を分析した。材料はソ連自身および衛星国だったポーランド、チェコが表明してきた見解である。米外交当局者はUP通信の外交担当だったヘンスレー記者に対し、外交的ではない、あけすけな言葉を使って、ソ連の意図を解説して聞かせた。

「ソ連はサンフランシスコ会議に出席して米英ブロックとアジア諸国の間にくさびを打ち込む目的で講和条約の代案を提出するとみられる」と米当局者は述べた。当局者によれば、ソ連が狙っているのはインド、インドネシア、ビルマ(現在のミャンマー)、フィリピンであり、このために次のような論点を用意しているとし、米政府の分析を解説した。

 ・日本が再び侵略国家とならないような対日講和条約上の保障=インドネシア、フィリピンへの呼びかけを狙っている。豪州、ニュージーランドも対象。この点でのビルマの見解はソ連と一致している。
 ・講和後の米軍の日本在留を認める条項を条約に入れることには反対する。
 ・対日講和条約は千島と南樺太をソ連に返還すべきだとのインドの主張をソ連は支持する。

当局者は「ソ連は宣伝的なジェスチャーをみせて賠償に対するフィリピンその他の権利を主張するとみられる」とも述べた。フィリピンが賠償問題を理由に対日講和条約に対する同意を留保し、米国がそれに手を焼いていることは以前にも触れたが、痛いところをついてくるとみているわけだ。

少し後のマニラ発AFP電によれば、米政府は対日講和条約草案のなかにある賠償、安全保障条項に対するフィリピンの要求に応じた。外交という名の戦争を実感させる。機敏な姿勢転換である。

この当局者によれば、ソ連は軍隊を出して対日戦争に参加したすべての国を会議に加えるべきだとも提案するとみられた。会議参加国はソ連を加え、この段階で25カ国だった。ソ連提案との関係はわからないが、同じ時期に、フランスも、インドシナ3国(ベトナム、カンボジア、ラオス)の参加を求めた。

それぞれの戦勝国が自らの立場を強めるための主張を強めていた。

ソ連は日本に対しても、揺さぶりをかける。米政府はそう読んでいた。

日本揺さぶりの材料になりうるのは琉球(いまは沖縄と呼ぶのが普通だが、当時の呼称にならう)・小笠原の米統治に対する反対である。1945年夏の終戦時にソ連は日本の北方領土を不法占拠しているのだから、理屈には合っていないのだが、琉球・小笠原が米国の戦略的信託統治に置かれることに反対する。

日本のナショナリズムを意識した戦術であり、特に日本共産党に対する支援と米国は受け止めた。

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