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米フェヌグリーン・シュクラCEO「『飢え減らす』10代で決意」

「小さな紙切れで、世界の飢えを減らしたい」。起業を思いついたのは高校生の頃だった。果物や野菜の下に敷くだけで、通常より2~4倍長く新鮮な状態を保つことができる特殊な紙「フレッシュペーパー」を発明、特許を取得した。地元の朝市から小さく始めた事業だったが、今では全米で手に入る。発明のきっかけはインドの田舎に住む、祖母の知恵だった。

討論するフェヌグリーンのカビタ・M・シュクラCEO(10月25日午後、東京・丸の内)

欧州で生まれ、米国で育った。中学生の頃、インドに住む祖母の家を訪れた時、歯磨き中に誤って生水を飲んでしまった。インドの水は飲用に適さない。「絶対に病気になる」。焦り、半ばパニックになりかけたとき、祖母が台所でハーブやスパイスを混ぜたどろっとした液体を作り「これを飲めば大丈夫よ」と差し出した。半信半疑、しかも味はまずかったけれど、効果てきめんで体には何事も起きなかった。「魔法のよう」。不思議で鮮烈な印象が子ども心に残った。

魔法のスパイスの正体を知りたくて、いろいろな野菜や果物をハーブに漬け込み、腐る過程を研究した。すると一部のハーブが、台所のカビやバクテリアの繁殖を防止することに気づいた。さらに実験を重ねてフレッシュペーパーを開発し、17歳で特許を取得した。

当時はとにかく、わくわくしていた。この小さな紙があれば、田舎で冷蔵庫のない生活をしている人々も新鮮な物を食べられる。世界中の飢えに苦しむ人を救えるのではないか。

現在、世界の食料供給量の25%が腐敗によって失われている。16億人は基本的な冷蔵設備を持たず、毎日8億人が空腹のままベッドに入る。

この小さな紙を世界中に無料で配りたい。大学在学中に非営利組織(NPO)を設立し、身近な人々に配り始めた。アイデアに自信はあったが、関心を持つ人はほとんどいない。限界を感じ、活動を完全に中止した。大学卒業後は、就職して研究職にいそしんだ。

ただ、仕事をしてもフレッシュペーパーの事が頭から離れない。何年も迷った揚げ句、もう一度自分に懸けてみることに決め、辞職して起業した。最初は開業資金も、マーケティングノウハウも少ない。毎週土曜日朝の地元の朝市に出品したり、農家の人々に配ったりすることから始めた。

口コミで評判が広がり多くの支援者が現れ、1年弱で大手小売りでも販売を開始した。想像以上の速さで成長しているが、本当の目的達成にはこれからが本番だ。

この紙が一番必要なのは飢えに苦しんでいる人々。発展途上国や米国にも多くいる。「万人に新鮮な食べ物を」をスローガンに、世界中にこの紙を広げていきたい。

 米フェヌグリーンCEO・カビタ・M・シュクラ氏 2006年米ハーバード大卒業。同大でビジネスについて研究。「フレッシュペーパー」を製造・販売するフェヌグリーンを10年に設立、最高経営責任者(CEO)に就任。ドイツ出身。28歳。

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