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働く女性の後押しに必要なことは

グローバル・ウーマン・リーダーズ・サミット

 日本経済新聞社は7月2日、女性の社会進出の現状と課題について議論する「グローバル・ウーマン・リーダーズ・サミット」を東京都渋谷区のヒカリエホールで開いた。フェイスブック最高執行責任者(COO)のシェリル・サンドバーグ氏らが基調講演し、パネル討論では女性の労働参加率を上げるために必要なことなどについて、活発な議論が繰り広げられた。
討論する(左から)サンドバーグ、南場、松井、川本の各氏(7月2日、東京都渋谷区)

無視できないGDP押し上げ効果

松井氏「安倍首相が女性が働く必要性を『アベノミクス』に盛り込んだ。十数年前の日本では女性を活用するという考えは珍しく、やっとここまできたという感じがする。日本人女性の労働参加率(15~64歳)は6割になり、徐々に上がってきているが、他の先進国と比べるとまだまだ低い。女性の労働力が男性並みの8割強になると、日本の国内総生産(GDP)を約14%押し上げるといわれている。これは先進国の中でも高く、無視できない数字だ。なぜ女性の活用が必要なのかを経済統計の数字で説明していく必要がある」

キャシー・松井氏(ゴールドマン・サックス証券チーフ日本株ストラテジスト)

「日本経済は、債務がGDP比2.4倍規模になっているにもかかわらず、労働人口は今後40~50年後に半分に減ってしまうという厳しい状況におかれている。既存の労働人口をフルに活用しないと、日本の潜在成長率だけでなく、今後の生活水準そのものを維持するのが困難になる。日本が競争力を維持するためには、国や企業、社会がそれぞれどういった役割、責任を果たすべきなのかを真剣に考えないといけない」

長時間労働の偏重は問題

川本氏「日本企業は女性が会社を辞めることに対してほとんど手を打っていない。その理由は、企業が終身雇用や年功序列などで人を評価しているからだ。その評価システムも長時間労働などを重視していて、具体的ではないのも問題だ。日本は女性が参政権を得たのが1945年で、欧米に比べ20年も遅れている。女性がきちんと仕事をする姿を見たことがない中高年男性が多いため、企業は女性をうまく活用できていないのだろう」

川本裕子氏(早稲田大学大学院教授)

サンドバーグ氏「成功した女性は同僚から反感を買い、好かれないことが多い。これが、女性が社会でリーダーシップを発揮するのを難しくしている理由の一つだ。リーダーである女性がどんな困難に直面しているのかを、周りが理解していくことが重要だ」

南場氏「仕事ができる女性が嫌われるとは思っていなかった。むしろ、女性のほうが得をしている時はあると思う。自分が20代の頃は、経営の難しい話をする女性が少なかったため、経営者によく話を聞いてもらえた。もちろん、最終的には内容と実力で勝負するのはもちろんだが、まずは土俵に上がれるので得をしたなと思うことは多かった」

松井氏「日本の金融業界に就職する女性は多いのに、かなりの人が辞めてしまう。なぜ育児や介護が女性を仕事から引き離す要因になるのか。日本の資源の一部は人材だ。優秀な人材が日本の会社に勤めてくれるためには何が必要なのかを考えないと、そうした人材は入ってこない。改革には何年もかかるかもしれないが、変えることができれば、日本の将来は明るくなるだろう」

評価は頑張った結果で

シェリル・サンドバーグ氏(米フェイスブック最高執行責任者)

川本氏「一定数の女性を登用するクオータ制(割当制)については、環境を整えるという意味で、安倍首相が女性の登用について言及するのはいいと思う。しかし、制度がいいかどうかについては議論の余地がある。日本企業が人物本位で評価する制度を取り入れ、人材を生かすことをきちんと考えるようになれば、男性、女性と区別されることはなくなるだろう」

南場氏「クオータ制は本当の意味での発展を阻害するし、頑張っている人に失礼だ。すでに法制度では男女の差がなくなっている。過渡期だからこの制度を使うという議論は危険だ。あの女性はクオータ制で上に登ったのかと思ったら、他の女性は頑張るだろうか。男性も女性も頑張った結果で評価されるようにすべきだ」

サンドバーグ氏「日本がどのような政策を採るべきかは私がいうべきことではないが、クオータ制は解決策ではない。日本のシステムに適切かどうかは、日本の皆さんで判断するものだ」

松井氏「私は条件付きで賛成だ。日本の場合、一時的に公的部門にクオータ制を導入してみたらどうか。永久的に制度を使うのは好ましくないが、労働参加率を上げるのにつながるのなら取り入れたらいい」

仕事と家庭、自分にとって最適な均衡レベルを

南場智子氏(ディー・エヌ・エー取締役)

川本氏「仕事はずっと続けたいので、プライベートとバランスをうまく取ってやっていきたいと考えてきた。たくさん働いた時もあるし、プライベートを優先した時もある。子どもがいなかったら、たくさん仕事はしなかっただろうし、仕事がなかったら、子育てを楽しめなかったと思う。他の人が言う一般的な枠組みで考えないことが必要だ」

松井氏「12年前に乳がんになったとき、専業主婦になろうかと思ったが、夫に反対された。私にとって仕事はストレス解消になっていることに気がついた。そこで、治療の一環として仕事に戻った。私は、『ワークライフバランス』という言葉は使わないようにしている。50対50のバランスでキャリアと家事を両立させなくてはならないと感じさせるからだ。成功している女性で、仕事と家庭での役割を完璧にこなしている人は見たことがない。バランスではなく、自分にとって最適な均衡レベルを見つけるべきだ」

南場氏「2年前に夫が病気になり、仕事より優先することがあるとわかったし、こういうことは誰にでも起こると気がついた。それまでも、介護や育児などの社内制度をしっかりと整備してきたが、制度を作るだけではだめで、魂を込めなくてはならない。迷惑をかけたくないという理由で会社を辞める人がいるが、迷惑は大いに結構。創業者である私が社員を全力でサポートし、それをちゃんと態度で示したい。そういう会社を作っていきたい」

サンドバーグ氏「よく『どうやって仕事と育児を両立しているのか』と聞かれるが、男性にこうした質問をするだろうか。こうした質問自体が、女性の自信をなくさせている。世界中の女性はもっと仕事をしなくてはならない。そのためにも、男性が家事を手伝う、企業がサポートする、などの変化が必要だ。社会で女性が活躍するためには、個人が行動に移さなくてはならない」

 グローバル・ウーマン・リーダーズ・サミット 日本経済新聞社主催の国際シンポジウムで女性の社会参画の現状と課題について世界の女性リーダーを招いて議論する。今回が第1回で、協賛は新日本監査法人、東京海上日動火災保険、三井物産、リクルートキャリア、エービーシー・マート。

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