ユーロ相場で考える「為替=国力説」の"幻想"  外貨投資の誤解(2)
編集委員 田村正之

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2010/6/21 7:00
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しかし「購買力平価を見ていたおかげで、08年くらいまでのユーロが適正価値から比べて割高過ぎるという警告は発することができていた」(佐々木さん)という。そして結果的に、ユーロは購買力平価の水準に向かって大きく下落した。

つまり短期では使えなくても、老後の資産形成などに備えて長期的に資産運用をするには「現在の為替水準が購買力平価などで見てどれくらいの位置にあるのか把握しておくことが重要」(竹中教授)だ。

個人投資家も、購買力平価を頭においておくことで、割高な水準で外貨を大量購入してしまわないことにつなげられるだろう。自分で計算するのは大変だが、前回も書いたように、インターネットの検索サイトで「国際通貨研究所」と入れれば、ドルとユーロの購買力平価のデータを見ることができるので参考にしたい。

ただし――。為替水準が長期的にはインフレ率の格差で決まってきたという話を酒場で友人にした場合、すんなり受け入れられたためしがない。「ふうん?」という疑問に満ちた目で受け流され、「せっかく説明したのに」と何だか釈然としない感覚が残る。グラフA~Cなどを見せれば少しは違うのかもしれないが、そんなものをいつも携帯しているはずがない。

背景には為替というものに対する漠然とした「刷り込み」のようなイメージが、友人を含めた世間全般にあるのではないかと思う。例えば「為替は国力を表すはずだ。少子化で衰退していく国の通貨が上昇するのはおかしい」というような。

もちろん常に経常赤字になるような時期が来れば、円安要因の1つにはなるだろう。ただしそれが為替のすべてを左右するわけではなく、経常赤字でも通貨が上がるケースはたくさんある。

国際的なアナリスト資格の認定団体である日本CFA協会名誉会長で、グラフAの作成者でもある岡本和久氏は「為替レートというのは基本的に、2つの通貨の交換価値に過ぎない。だからこそ長期的には購買力平価に沿った動きになる」と話す。

インフレ率が高ければ通貨の価値が下がり、インフレ率が低ければ上がる。長期的には、それが為替レートに反映される、とシンプルに考えればよいのかもしれない。

JPモルガンの佐々木さんは、日本銀行出身で、かつては為替介入にも携わった通貨のプロだ。その佐々木さんも、竹中教授も「基本的に為替レートは単純にモノとモノとの交換レートに過ぎない。為替が国力を表したり、成長率が高い通貨が買われたりするってのは幻想ですよ」という点では一致している。

「将来、日本売りが起きる可能性がないとは言えないが、あったとしても数十年単位の先の話。その前にはいったん金利上昇を背景に日本国債が外国人に大量に買われ、その後さらに財政が悪化して売られ始めるなど様々な前兆があるはず。日本衰退に備えて円を売るとしても、それからでも遅くない」(佐々木さん)。

もちろん為替に対する考え方は世の中に数多くあり、今回紹介したものが絶対正しいとも言い切れない。資産価格の動きは予測不能なので、資産に一定比率で外貨資産を入れておくことは大切だろう。

でも金融機関の多くが個人への外貨商品販売の際に使う「少子高齢化を背景に既に円安トレンドは始まっている。今は金融危機で一時的に円が買われているだけ」という言い方には、明確な根拠がない気がする。

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