ユーロ相場で考える「為替=国力説」の"幻想"  外貨投資の誤解(2)
編集委員 田村正之

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2010/6/21 7:00
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グラフBは佐々木さんが作成したユーロ円相場と、企業物価ベースで1985年を基準にした購買力平価(PPP)の推移。これを見るとユーロ円の購買力平価(適正レート)は、ずっと円高方向に動いている。対ドルと同じように、対ユーロでも円はインフレ率が低い(お金の価値が相対的に上がる)状態がずっと続いてきたためだ。

今年3月時点での購買力平価は1ユーロ=約112円。最近の実際のユーロ円相場の水準とほぼ一致している。欧州の財政不安でユーロが大きく下げたのは事実だが、「今が適正に近く、むしろ過去数年間がユーロは割高過ぎたとも言える」(佐々木さん)。

例えば数年前の1ユーロ=160円だったころにフランスに旅行してペットボトルの水(2ユーロ)を買うと、円換算で320円にもなった。それだけユーロが割高だったわけで、そうした状況はいつか修正されるということだ。

もう一つ、グラフCを見てみよう。これは国際通貨研究所が作成したユーロ円の購買力平価のグラフだ。こちらは物価の基準年が1999年なので少し形が違うが、購買力平価がユーロ安(円高)方向に動き、現在は適正水準に近づいているという点では同じだ。

グラフBグラフCから購買力平価に関して学ぶべきなのは、例えば購買力平価は長期的には成り立つが、短期的には大きく乖離(かいり)してきたことが多いということだ。

この傾向はドル相場も同じなのだが、特にユーロについては2007年くらいまでの数年間、実際のレートが購買力平価から見てはるかに高い水準に乖離(かいり)したままだった。佐々木さんも「あまりの差の大きさに、ユーロに関しては投資判断に十分役立てることができなかった」と振り返る。

メガバンクの調査部門などを経て現在は龍谷大学教授の竹中正治氏は「購買力平価は数年単位で適正レートと離れるし、いつ戻るかも分からないので短期や中期の投資にはほぼ役立たない」と指摘する。

「だから短期や中期の予測を求められる金融機関のディーラーやアナリストは、購買力平価についてほとんど言及しない。その結果、世の中全体にも、現実には役立たない教科書的な考え方と思われている」

確かに個人が為替証拠金取引(FX)など短期的な外貨投資をするには、この考え方は役立たないだろう。佐々木さんも「実際の相場が購買力平価から見た適正水準に長くいることは少なくて、どちらかにオーバーシュートしている期間が長い」として「目先の相場を予想する材料に使うべきではない」と注意を促す。

→次ページは「為替に対する"刷り込み"が判断鈍らせる?」

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