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日本の底力、世界に示す起点に(今ニッポン流)

長いトンネルを抜け、日本経済が明るさを取り戻しつつある。新興国が豊かになるにつれ、高度に成熟した日本独自の産業、経営、文化に世界から熱い視線が集まっている。かつて世界に通用しにくいと皮肉られた「ガラパゴス」も、視点が変われば宝の山を抱えた「黄金の島」。時代がようやく日本に追い付いてきた。合言葉は「ニッポン流」――。日出づる国の底力を世界に示す新たな起点にしたい。

現代版の「東方見聞録」

眼前の光景に息をのんだ。

青、黄、赤、緑……。東洋文庫(東京都文京区)には世界で出版された「東方見聞録」がズラリと展示されている。蔵書は伊語、仏語、蘭語、英語など計77種類。「チャンパグ(Cyampagu)」。アントワープ版を開くと、日本を意味するラテン語も見える。

1271年に東方に向かったマルコ・ポーロが見聞きした旅行記をまとめたのが「東方見聞録」。日本に関する記述はその一部だが、各地で翻訳され、冒険者の夢をかき立て続けた。新大陸に到達したコロンブスも「黄金の島」日本に魅せられていたという。

今、世界を見渡すと外国人がこぞって「ニッポン流」に目を輝かせている。さしずめ、現代版の「東方見聞録」と言ったところだろうか。

▼新横浜ラーメン博物館(横浜市)には連日、タイなど東南アジアから観光客が押し寄せる。5カ国のビザを緩和したことや円安、格安航空会社(LCC)の普及が追い風となり、入場客の1割強が外国人。その半分を東南アジアの観光客が占める。

▼ゼロを発見した数学の国、インドでは日本の学習教材が引っ張りだこだ。2013年11月にニューデリーで開いた国際展示会の模擬教室ではインド人の小学生が「公文式」のプリントや数字ゲームに熱心に取り組んでいた。「遊びながら学べる」。豊かな子育て世代が関心を寄せる。

▼「アフリカ最大の人口1億6000万人を狙え!」。ナイジェリアでは今春、初の日本アニメ衛星チャンネルが誕生する。旅行会社を脱サラした伊藤政則さんが起業し、現地の民放と提携した。10月には日本のアニメ制作技術を教える学校も開校する。

「ニッポン流」は欧米だけでなく、富裕層市場が拡大する新興国でも人気が高いのが特徴。世界各地でビジネスチャンスが膨らんでいるのだ。

アベノミクス導入で日本経済は大きな転換点を迎えた。

円高は是正され、低迷続きの株式相場も回復。日本企業は競争力を取り戻し、「失われた20年」からの脱却が進む。悲願だった20年の東京五輪開催も決定。富士山がユネスコの世界遺産、和食が無形文化遺産に相次いで登録され、訪日外国人は年1000万人の大台を初めて突破した。

誇りがV字回復

過去20年で日本の誇りがV字回復――。博報堂生活総合研究所の定点調査(1992~2012年)ではこんな傾向が浮かび上がった。日本が誇れることを聞き続けたところ、「質の高いサービス」「人情味」など多くの項目で回答率が00年前後で下降から上昇に転じ、92年と同等かそれ以上の水準に達したという。

「『おもてなし』など日本人だからこそ実現できる分野は世界のフラット化が進むほど強みを発揮できる。『ニッポン流は世界で通用する』と日本が自信を取り戻した証拠」(吉川昌孝・主席研究員)

そこでカギとなるのはニーズを踏まえた戦略と情熱のある仕掛け人。塩野七生さんは近著「日本人へ 危機からの脱出篇」でこう書いている。「日本にはまだ、国力が十分にある。経済力だけではなく技術力もあり、国民一人一人の意欲も、方向さえ定まれば国全体の活力に変わりうる」

寒い冬に耐え、力強く芽吹いた挑戦を応援したい。(編集委員 小林明)

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