現代アートはわからないからおもしろい
森村泰昌×平野啓一郎

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2013/10/25 6:30
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 最近の現代アートには、「だから何なの?」というおかしな作品も目立つ――。美術家・森村泰昌さんと芥川賞作家・平野啓一郎さんが美術と文芸という垣根を越え、アートを取り巻く現状を縦横無尽に語り合った。日本経済新聞朝刊アートレビュー面の連載コラム「クロスボーダーレビュー」(※1)で映画、美術評を執筆してきた両氏が、これまでの評論を振り返りながら話を弾ませる。ネット時代に美術や映画、文芸が直面する課題にも光をあてた。

■これは何なのか わからなさに心を揺さぶられる

平野啓一郎(ひらの・けいいちろう)
 1975年愛知県生まれ。北九州市出身。京都大学法学部卒。98年在学中に文芸誌「新潮」に投稿した『日蝕』により、翌年第120回芥川賞を受賞。以後、数々の作品を発表し、各国で翻訳紹介されている。著書は『葬送』『滴り落ちる時計たちの波紋』『決壊』『ドーン』『かたちだけの愛』『モノローグ(エッセイ集)』『ディアローグ(対談集)』など多数。近著は、新書『私とは何か「個人」から「分人」へ』、長篇小説『空白を満たしなさい』。

平野啓一郎(ひらの・けいいちろう)
1975年愛知県生まれ。北九州市出身。京都大学法学部卒。98年在学中に文芸誌「新潮」に投稿した『日蝕』により、翌年第120回芥川賞を受賞。以後、数々の作品を発表し、各国で翻訳紹介されている。著書は『葬送』『滴り落ちる時計たちの波紋』『決壊』『ドーン』『かたちだけの愛』『モノローグ(エッセイ集)』『ディアローグ(対談集)』など多数。近著は、新書『私とは何か「個人」から「分人」へ』、長篇小説『空白を満たしなさい』。

森村 平野さんは『アイ・ウェイウェイ展』(※2)についてはあんまりいい評価をしていませんよね。僕もね、ノーコメント(笑)。

平野 全然いいと思いませんでした。取り上げなくてもいいかとも思ったのですが、彼の政治的パフォーマンスだけでワイワイ騒いでいる人たちに、一度、作品をちゃんと見てみたらという気持ちがありました。だから、いきなり酷評して見に行く気を失わせるような書き方もしてません。もう「いかにも現代アート」という感じで、お茶とか自転車とか題材にして、外国人にとって中国人アーティストがこう見えたらいいだろうなというような、そんなことばっかり考えて作品を作ってますよ、彼は。

森村泰昌(もりむら・やすまさ)
 1951年大阪市生まれ。大阪市在住。京都市立芸術大学美術学部卒業、専攻科修了。85年ゴッホの自画像にふんするセルフポートレイト写真を制作。以降、一貫して「自画像的作品」をテーマに作品を作り続ける。主な国内での個展に、『美に至る病/女優になった私』(横浜美術館)、『空想美術館/絵画になった私』(東京都現代美術館他)、『私の中のフリーダ』(原美術館)、『なにものかへのレクイエム/戦場の頂上の芸術』(東京都写真美術館他)など。最新の個展に『ベラスケス頌:侍女たちは夜に甦る』(資生堂ギャラリー)。現在、ヨコハマトリエンナーレ2014の芸術監督を務める。

森村泰昌(もりむら・やすまさ)
1951年大阪市生まれ。大阪市在住。京都市立芸術大学美術学部卒業、専攻科修了。85年ゴッホの自画像にふんするセルフポートレイト写真を制作。以降、一貫して「自画像的作品」をテーマに作品を作り続ける。主な国内での個展に、『美に至る病/女優になった私』(横浜美術館)、『空想美術館/絵画になった私』(東京都現代美術館他)、『私の中のフリーダ』(原美術館)、『なにものかへのレクイエム/戦場の頂上の芸術』(東京都写真美術館他)など。最新の個展に『ベラスケス頌:侍女たちは夜に甦る』(資生堂ギャラリー)。現在、ヨコハマトリエンナーレ2014の芸術監督を務める。

森村 彼は政治的な問題で当局に逮捕されたりもしているけれど、それをテーマに作品を作っていますね。実作を見ましたが、どうも琴線に触れて来ない。だから、平野さんのやる気のなさがレビューに出ていて、あ、意見は同じだな、ってうれしかった。

平野 そうですね。僕は、現代アートがわからない、と言うときに、2つの意味があると思うんです。これは何なのかと認識を揺さぶられて自分の心にひっかかるわからなさと、アイ・ウェイウェイの『1トンのお茶』みたいに、「だから何なの?」っていう、こっちがしらけるようなわからなさ。感覚的な分類ですけど、僕はその違いはやっぱりあると思う。一般には、それがごちゃまぜになって「わからない」と言われているんだと思いますけど。

■「わからなさのおもしろさ」をどう伝えるか

コンセプチュアルアートというのがあるぐらいだから、必ずしも言葉ナシで作品が自立してないといけないとも思わないんですけど、作品の横に大仰なコンセプトが書いてあって、作品を見てがっかりすることは結構ありました。だから、現代アートに特に興味のない人にも風通しをよくしたいと思いつつ、無理して現代アートの弁護人になるつもりもなくて、回によってかなり温度差が出てると思います。森村さんの映画評でも、「わからない」映画が多かったですよね。

※1 クロスボーダーレビュー 2009年6月に日本経済新聞朝刊アートレビュー面で始まったコラム。森村さんが映画評、平野さんが美術評を毎月1本執筆。森村さんは13年4月で連載終了。13年10月現在、平野さんの美術評は継続している。
※2 『アイ・ウェイウェイ展―何に因って?』 アイ・ウェイウェイは現代中国を代表する美術家。2009年7月25日~11月8日に森美術館(東京都港区)で開催した。1トン分の茶葉を圧縮した立体「1トンのお茶」、自転車42台を円筒状につなげた「フォーエバー自転車」など、1990年代以降の主要作品26点を紹介した。
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現代アート、素朴な疑問

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