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市長と議会「場外対決」火ぶた 名古屋でリコール署名開始

法定数到達にハードル高く

名古屋市の河村たかし市長が主導するリコール(議会の解散請求)に向けた署名活動が27日から始まった。市民税減税の恒久化などを実行するために市長自ら選んだ「最後の手段」で、1カ月間で36万人超の署名が必要だ。名古屋で繰り広げられる市長と議会との"場外対決"は、地方自治における首長と議会のあり方をも問うている。

市長、公約実行でいらだち

「市長を選んだ民意を実行しないといけない。何としても署名を集めて市民の街を作りましょう」。27日夜、名古屋市内の繁華街に立った市長は声を張り上げた。「応援してちょーよ」と名古屋弁で練り歩く市長には、たちまち人だかりができた。

昨年4月の同市長選で史上最多の約51万票を得ての就任以来約1年4カ月。市長と議会との対立は深まるばかりだった。市長は公約の市民税10%減税の恒久化や、議員報酬(約1630万円)の半減などを目指したが、いずれも議会は反対。いらだちを募らせる市長がリコールを口にするようになったのは昨年秋ごろにさかのぼる。

これに反応した議会は昨年12月の臨時議会で「市民サービスは低下させない」との条件で減税条例案をいったんは可決した。だが、今年3月の定例議会で予算案に第3子の無料保育の廃止が盛り込まれるなどすると、一転、減税を2010年度の1年限りに修正。恒久化にこだわる市長との対立は決定的となった。

議会との話し合いを捨てる今回のリコールは、公約実現ために市長が選んだ「最後の手段」といえる。市長の狙いは9月27日までの1カ月間で、名古屋市の有権者の約2割に当たる約36万6千人分の法定署名を集めて住民投票を実施。解散されれば、出直し選で自らが代表を務める政治団体「減税日本」から40人以上の候補者を擁立し、議会定数(75)の過半数獲得を目指す。

議会側「二元代表制の否定」

市長は市議選にあわせて自らも辞職し、再出馬する意向で、来年2月に任期満了を迎える愛知県知事選を巻き込んだ「トリプル選挙」をももくろむ。ただ、過去に政令指定都市でリコールが成立したことはない。署名は氏名、生年月日、なつ印など要件が定められており、ハードルは高い。

河村市長側が想定するリコールの流れ
8月27日署名活動開始…9月27日までの1カ月間で約36万6千人分の法定署名が必要
10月上旬署名簿を提出…各区の選挙管理委員会は20日間かけて有効な署名数を確認。7日間かけて縦覧し、異議があれば14日以内で対応
11月上旬解散請求…請求から60日以内に住民投票実施
2011年1月上旬住民投票…有効投票の過半数の賛成で議会は解散。40日以内に市議選実施
2月6日?市議選、市長選、知事選のトリプル選挙?

受けて立つ側の議会の危機感は強い。市長の手法に「(首長と議員が共に住民の直接投票で選ばれる)二元代表制の否定だ」(横井利明議長)と猛反発。27日に臨時議員総会を開き「市長が先頭に立つ署名活動は憲法や地方自治法の精神を踏みにじるものだ」とする決議文を可決した。

署名期間中は、対抗して街頭活動やシンポジウムなどを実施し、市民に主張を訴えていく方針。最大会派の民主党は市長選をにらんだ対抗馬の擁立も急ぐ。

明治学院大の吉田勉講師(地方自治法)は今回のリコールについて「地方自治法上、市長の議会解散権が自らの不信任議決の対抗措置でしか発動できないことから選択せざるを得なかったもの」と指摘。「市長主導とはいえ、決着は民意に委ねられる。行政への市民の関心を呼び起こし、地方自治を発展させるためにはマイナスにはならない」と一定の理解を示す。

一方、名古屋大大学院の後房雄教授(行政学)は「市長と議会が常時対立すると、市政の課題解決につながる議論が進まないという二元代表制の問題点が浮き彫りになる。首長と議会が予算編成などを協働する『議会内閣制』の導入も含めて、地方自治のあり方を検討すべきだ」と指摘している。(名古屋編集部 鱸正人)

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