広がる自主防災 市民自ら避難訓練

2011/7/3付
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知多半島の先端、三方を海に囲まれた愛知県南知多町の師崎地区で6月4日、津波を想定した初の避難訓練が行われた。東日本大震災の被害に衝撃を受けた住民自らが発案し、実行した。

■避難者はゼロ

住民組織が主導する避難訓練が沿岸部で広がっている(愛知県南知多町師崎地区)

住民組織が主導する避難訓練が沿岸部で広がっている(愛知県南知多町師崎地区)

「ここは年寄りには上れないよ」「農道の草を刈ろう」。当日、参加したのは地区住民の4分の1にあたる475人。車いすの高齢者らもまじり、一斉に高台の寺や公園などを目指した。「自治会役員だけが参加する儀式」(南知多町議)だった役所主導の避難訓練ではみられない緊張感に包まれた。

3月11日、伊勢湾内にも1メートルの津波が到達した。津波警報が発令され、町は沿岸部に避難勧告を出したが、師崎地区で避難した人はゼロだった。「マグニチュード9.0級の大地震が東海沖で発生してより高い津波がきたら……」。震災当日、公民館で被害状況の把握にあたった自治会長の山本嘉秀さん(67)は危機感を募らせた。

師崎港の防波堤の高さは2メートル。震災後、地震の研究者らが「3連動型の巨大地震が発生した場合、濃尾平野の内陸部まで津波による浸水が発生する」というシミュレーションを相次いで発表。山本さんは行政の動きを待たず、漁協組合や老人会、婦人会などに訴えて訓練実施にこぎ着けた。

■行政任せ見直す

東日本大震災は、行政任せだった市民の防災に対する意識を変えた。住民や企業による避難訓練や防災計画の見直しの動きはその象徴といえる。

太平洋に面する三重県鳥羽市。行楽シーズンには観光客でにぎわう鳥羽駅前の商業施設「鳥羽一番街」はこの4月、来場者の安全を確保する訓練を独自に行った。「土地勘のない来場客を安全な場所に誘導するには事前の準備が大切」(原田佳代子社長)

海岸から50メートルほどの同施設から約1キロ離れた高台に全員がたどり着くまで10分以上。三重県中南部では巨大地震から十数分で津波が到達するとの予測もある。訓練後、施設は避難所の場所を変更するよう同市に呼び掛けた。同県ではほかに、尾鷲市や紀北町などでも住民主導の避難訓練が行われている。

稼働停止中の浜岡原発を抱える静岡県御前崎市でも住民が危機感を高めている。「防災先進地」とされる静岡県だが、同市浜岡地区はこれまで県内一斉の津波避難訓練には参加してこなかった。「高さ10メートル超の浜岡砂丘が守ってくれる」という"神話"がその理由だ。

「本当に津波が来ても大丈夫なのか」「どこに逃げればいいか分からない」……。震災後、住民から同市防災課に問い合わせが殺到。県が5月21日に開催した一斉訓練に浜岡地区の住民約3000人が初めて加わった。

静岡大学防災総合センターで地域の防災教育を研究する里村幹夫教授は「被害想定をもとに堤防を整備したところで『想定外』は起こる。住民が声を掛け合うなど様々な事態に対応できるように訓練を何度も重ねることが必要だ」と話す。

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