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命奪う「名古屋走り」 事故死ワースト脱却へ苦闘

交通事故死者数、全国ワースト1位。昨年、こんな不名誉な記録に甘んじたのが愛知県だ。今年も全国最多を走り続けている。「名古屋走り」と皮肉られる県民の交通マナーの悪さが、事故が減らない理由の一つとされている。警察や企業はドライバーの意識向上に躍起となっているが――。

黄色線を越えて車線変更するなどの違反が目立つ(名古屋市中区の桜通り)

7月上旬のある平日の午後、名古屋市を東西に走る若宮大通の交差点で、右折車線に並んでいた1台の乗用車がいきなり左車線に進入した。進路変更が禁じられている黄色線をウインカーを出さずに越え、周囲を確認した様子もうかがえない。たまたま左車線に車は走っていなかったが、一歩間違えば大事故につながりかねなかった。

車線またいで走行

愛知県警の白バイが摘発すると、運転していたのは20歳代の女性。違反理由は「美容院の時間に遅れそうだったから」。右折車線が混んでいたので直進することにしたといい、「捕まると思わなかった」と意外そうな表情さえみせた。

全国ワースト1の交通死者数。その裏には今回のようなあまたの「ヒヤリ・ハット」が控える。白バイの男性巡査部長(37)は「違反は年齢、男女を問わない。周りを考えて運転すれば違反や事故は減るはずだが……」とため息をつく。

車線変更を繰り返す。車線をまたいで走る。信号が赤に変わる直前に交差点に突っ込む――。愛知県民のドライバーのマナーの悪さは、名古屋走りの言葉とともに全国区になった。

東京から名古屋に移り住んだある男性会社員は「停車中の車がウインカーを出さずにいきなり発進してきたり、強引な割り込みをしてきたり。名古屋は好きだが、名古屋走りは大嫌い」と憤る。

「まるで事故の輸出…」

愛知県の交通死亡事故は2004年(368人)以降減少し続けてきたが、11年は225人と増加に転じた。12年も半年で100人を超え全国最多だ。先月には名古屋市北区で乗用車が右折禁止の交差点を右折し、直進してきたバイクと衝突し、バイクの大学生(20)が死亡。3月には同市守山区の交差点で乗用車が急に車線変更し、後続のトラックや路線バスを巻き込む事故となった。

県内だけにとどまらない。全国の高速道での死亡事故103件(116人、8日現在)のうち、10件(10人)が愛知県居住者が原因だった。事故の1割弱にかかわった計算でこちらもワースト1。「事故を『輸出』しているようなものだ」。県警幹部も頭を抱える。

愛知県はクルマ社会だ。自動車検査登録情報協会の昨年の集計によると、自家用乗用車(軽乗用車含む)の1世帯あたりの普及台数は1.3で、東京(0.4)や大阪(0.6)を大きく上回る。名古屋市中心部には「100メートル道路」と呼ばれる片側4車線の幹線道が走り、渋滞緩和などには一役買う半面、スピードが出やすい。

「愛知県の交通モラルが低いイメージをどう思いますか」。県警は5~6月、ホームページでこんなアンケートをとった。意識を改めてもらう狙いもあり、「恥ずかしい」などの意見が寄せられたという。

交通評論家の矢橋昇さんは、愛知県内の小学校で交通マナーの教室を開いた際、「黄信号は止まれ」の意味を知らない児童がいたことに衝撃を受けた。「大人も先生も親もルールを守っていない。子供が覚えるわけがない」と矢橋さんは話している。

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