電力不足、企業「自衛」に走る 泊が止まる日(上)
計画不透明、戸惑いも

2012/4/28 6:01
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5月5日、北海道電力の泊原子力発電所3号機が定期検査に入り、道内の原発が全停止する。再稼働に向けた地元同意には時間がかかるとみられ、今後、道内でも電力需給の逼迫は避けられない。企業の間では節電対策の徹底など"自衛"の動きも広がり始めた。泊が止まる日を目前に控えた道内の動きを追う。

■各地を営業奔走

「協力いただければ、電力料金の割引を受けられます」。ベアリング大手の北日本精機(芦別市)本社を26日「需給調整契約のお願い」と記した書類を抱えた北電の営業社員が訪れた。夏のピーク時の節電を依頼するためだ。

北電は電力不足対策として需給調整契約を拡大する。製造業などの大口需要家を主な対象に、自発的な節電に協力してくれた企業には料金を割り引く。多くの企業の理解を得ようと、営業社員が道内各地を駆け回る。

北日本精機では要請を受け、あらかじめ日時を決め電気の購入を抑える「操業調整契約」を結ぶ予定という。ただ需給逼迫時に北電からの要請で電気の購入を抑える「随意調整契約」は「生産計画への影響が大きい」として見送る方針だ。

北電がまとめた電力需給見通しによると10年と同程度の猛暑になれば、道内電力は7~8月にそれぞれ3%強不足する。代替電力としてフル稼働する火力発電のトラブルが生じれば、状況はさらに切迫する。迫る電力不足に備えようと道内企業では自衛の動きも広がり始めた。

ハンバーグ店「びっくりドンキー」を運営するアレフ(札幌市)は6月末までに、直営77店の客席照明を消費電力の少ない発光ダイオード(LED)に切り替える。投資額は計2400万円。これまでも照明の間引きなど節電に取り組んできたが、今夏は電力使用量を前年比でさらに3%減らすのが目標だ。

節電対策として普及が進むLEDだが、店内の微妙な明るさの変化は料理の見栄えなどにも影響しかねない。アレフでは5月7日から札幌市郊外の藤野店で実証実験を始める計画で「最適なLEDを選びたい」と話す。イオン北海道もLEDの導入実験を始める。

電力の使用を抑える仕組みづくりも進む。ホテル大手の鶴雅グループ(釧路市)は全9施設に電力監視装置を導入した。あらかじめ設定した電力量を超えると警報が鳴り、施設内の電源が自動的に落ちる。事務所の冷房など宿泊客には影響が出ないように配慮し「3%ほどの節電なら十分対応できる」(同社)。

もっとも、計画停電の実施など今後の北電の対応が明らかになっていないため、製造業を中心になお戸惑いの声も多く上がる。

■生産減も検討

「夏に節電を要請されても、電力需要を削る余地はほんどない」。金属機械製造会社、西野製作所(室蘭市)の西野義人社長はため息をつく。同社では例年7~9月に生産がピークを迎える。自家発電の導入も検討しているが「投資額が大きい。来年以降の電力需給も不透明」と踏み切れずにいる。

ゴム製の床材や融雪マットの製造を手掛ける北海道ゴム工業所(由仁町)は、「夏の電力が不足すれば生産を減らすしかない」と思案する。減産分は冬場に積み増す計画だが、「原発が再稼働していなければ今以上に電力需給が逼迫するのが確実。先行きを示してほしい」と話す。

北海道経済産業局の鈴木洋一郎資源エネルギー環境部長は「道内の電力規模は本州に比べ小さいため、原発など大型発電所が停止すれば影響は大きい」と指摘する。原発再稼働への道筋も不透明ななか、道内企業の危機感は高まりつつある。

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