北海道産牛乳、中国開拓に冷水 口蹄疫余波で輸出停止
口蹄疫(こうていえき)問題を受け、中国が日本産牛乳の輸入を4月末から停止している。道内ではホクレン農業協同組合連合会の貿易子会社ホクレン通商(札幌市)が、中国で道産牛乳の市場開拓に力を入れ始めたばかり。現地ではニュージーランドなど競合する酪農国の商品も浸透しつつあり、出荷の中断が有望市場での出遅れにつながりかねないとの戸惑いの声も出ている。
「(輸入停止が解除された後)元の販売体制に戻れるか心配」。ホクレン通商は2008年度から、常温で長期保存(約60日)できるように加工した「ロングライフ(LL)牛乳」を中国に輸出している。初年度は年間12トンだったものが翌09年度には30トンに増え、今年は4月時点で月間8トンにまで拡大していた。
デパートで積極的に販売し富裕層を開拓してきたが、4月下旬に宮崎で口蹄疫が発生。中国政府は日本からの乳製品の輸入を停止した。
口蹄疫が発生した国の畜産物の貿易上の取り扱いについては、基本的に2国間協議で決められる。口蹄疫発生直後に日本は牛肉の輸出を全面的に停止したが、6月からは香港とマカオ向けが再開された。LL牛乳については香港への輸出が継続されている。
道産LL牛乳の輸出を手掛けるホクレン通商にとって、新市場の開拓は不可欠だ。08年度には約800トンだった輸出量は09年度には約2000トンに急拡大した。ただ、輸出の9割を占める香港では販売促進策もほぼ一巡し、「さらなる市場拡大は見込みにくい」(ホクレン通商)との指摘もある。
中国市場への期待は高まるが、すでに激戦区になりつつあるのも事実だ。北京五輪(08年)などを背景に食の西洋化が進み、牛乳に親しむ消費者も目立ち始め、ニュージーランドやオーストラリアも輸出に乗り出しているからだ。
ニュージーランド産などのLL牛乳は1リットル当たり250円前後で売られているが、道産は500円台と倍近く高い。販路開拓では、中国で人気が高い「北海道ブランド」という部分に頼っているのが現状だ。
ここにきて、中国内の農家が牛乳を売り出す機運も高まっている。「中国政府も産業として育てようとしているだけに、輸入停止は長引く可能性もある」(流通関係者)との見方も。道産LL牛乳を海外に売り込んでいくには、さらなる付加価値づくりが急務となっている。
(伊藤敏克)