「東北進出、先手で」「旧態の観光捨てよ」 函館の研究(7)
松本栄一氏・清水慎一氏インタビュー

2012/1/14付
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東北市場の開拓を訴える函館商工会議所の松本栄一会頭と、市の経済再生会議の委員を務める立教大学観光学部の清水慎一特任教授に函館経済圏の展望を聞いた。

■東北市場進出、先手打て 函館商工会議所会頭 松本栄一氏

函館商工会議所会頭・松本栄一氏

函館商工会議所会頭・松本栄一氏

――北海道新幹線開業を見据えて東北への南進政策を掲げた理由は。

「函館の最大の衰退要因は人口の減少にある。人口減少によって失った市場を取り戻すには広域化して補うしかない」

「函館に進出している企業が1400あるのに対し、函館から外へ進出する企業は430しかない。函館―青森間は青函トンネルができても約2時間かかり、東北との経済・文化的なつながりは薄かったが、新幹線で初めて"陸続き"になる。東北にどう足がかりを作っていくかにかかっている」

――具体策をどう講じるか。

「東北進出で有効なのは地元企業のM&A(合併・買収)だ。突然出て行くと、よそ者扱いされて10年はまともに商売ができない。金融機関から情報を得て戦略を練る必要がある」

「函館は親しい仲間でグループを作り、競争が生まれない地域ぐるみの『仲良しクラブ』になっている。仲良しクラブから抜け出して競争に挑まなければならない」

――新幹線が札幌まで延伸する影響は。

「新幹線延伸で札幌は盛岡や仙台など東北と連携を強めるだろう。札幌から東北にヒト、モノ、カネが流れていく時代に函館は中抜きになる。函館が生き残るためには、札幌延伸までに東北での足場を固めなければならない」

――柱となる観光と水産加工の振興に必要なことは。

「関連業種が多い観光を守るために、宿泊施設が値引き競争を止め、質と価格を維持する意識が必要だ。函館観光は宿泊率が高いが、もう1泊したいと思う魅力をどう作るか。今年は観光の専門家を交えて、観光客の満足度調査を実施する」

「観光はアジアからの集客に向けて取り組んでいるが、水産加工業も同じ視点が必要になる。水産加工は国内競争力はあるが、人口減少でいずれ行き詰まる。北海道教育大が函館校に新設を計画している国際関係学部の卒業生の語学力を生かし、アジア進出を支える仕組み作りも目指したい」

■旧態依然の観光捨てよ 立教大学観光学部特任教授 清水慎一氏

立教大学特任教授・清水慎一氏

立教大学特任教授・清水慎一氏

――新幹線開業が函館観光を活性化するとの期待が高まっている。

「新幹線に乗って、初めて函館を訪れる観光客が増えるだろうが、開業ブームは1年で消える。函館を初めて訪れた観光客を、いかにして『もう一度来たい』というリピーターやファンに育てるか、ここに函館観光の生死がかかっている。従来の東北や首都圏を狙った『いか。ないと。函館』キャンペーンなどは函館の魅力を矮小(わいしょう)化し、誘客の効果もみえない」

――函館観光が抱える課題とは。

「夜景、朝市、イカに頼りすぎだ。成熟化した観光客は、マンネリ化した観光地には見向きもしない。魅力があれば値引きせずとも人を引き寄せられる。個人客の獲得に成功した九州の由布院温泉の平均宿泊単価は約2万円で、湯の川温泉の2倍の額を稼いでいる」

「函館には飲み歩きイベントの『バル街』や観光関係者で作る『箱館会』など、有望なイベントや団体がすでに存在している。函館市や業界団体も海外へのトップセールスに熱心だ。だが実際にはそれぞれがバラバラに観光振興に取り組み、連携していない。団体ごとにホームページがあり、観光客はどれをみたらよいのか分からない状況にある」

――どう対応していくべきか。

「各団体の役割分担を明確にし、関係者全体で専門窓口などのプラットフォームを構築すべきだ。パリは市の観光局が運営する案内所が美術館のチケット販売からホテルの予約まで幅広い分野の相談に応じ、観光客の満足度を高めている」

「何よりも重要なのは観光振興への市民の参加だ。名所を巡る観光は過ぎ去り、街歩きが新しい観光資源となっている。市民による街づくりで中心市街地ににぎわいを生み出し、景観の美化にもつなげていく。そうすることで観光客が2泊3泊と長く滞在したい街に変わっていけるはずだ」(おわり)

この連載は山本公啓、遠藤邦生、小野沢健一、酒井恒平が担当しました。

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