飲むだけじゃない ワインツーリズム、北海道で広がり

2010/9/10付
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「まるでヨーロッパの田園風景ね」。畑一面に連なるブドウの木々を目の前にして、数十人の男女からため息が漏れた。今年6月、岩見沢市内にある宝水ワイナリー。一団はブドウへのこだわりや生育状況など担当者の話を聞きながら、畑や醸造所を回った。

国内ではまだ珍しい、ワイナリーを巡るワインツーリズムが道内で定着しようとしている。仕掛けるのは、道内のソムリエやワイン愛好家らが昨年4月に設立した「北海道ワインツーリズム」協議会だ。

2~3カ所のワイナリーを巡るツアーでは道産ワインに詳しいソムリエが同行する。車中でもワインの魅力を語り、理解を深めてもらう。事務局長を務める北海道ワイン(小樽市)総合企画室の阿部真久氏は「道産ワインに親近感を持つ契機になれば」と話す。

ツアー客を受け入れる山崎ワイナリー(三笠市)の山崎太地氏は「消費者にワインの魅力を直接伝えられる」と喜ぶ。これまで縁遠かったワイナリー同士が連携する機運も生まれてきたという。

ワイナリーが活動する地域の活性化も目指し、昼食では道産ワインを楽しめる地元のレストランに立ち寄る。例えば、空知管内のツアーの際には滝川市内のレストランやカフェをツアー客に案内し、「旭川や富良野に比べて知名度が低かった滝川の魅力をアピールする」(阿部氏)。

「ワインツーリズムは豊かな自然と食材を同時に楽しめる理想的な北海道の観光スタイルになる」と語るのは、シィービーツアーズ(札幌市)の戎谷侑男社長。同社はツアーの運営を担当し、口コミなどでリピート客も増えてきたという。

今年は6月にツアーを計4回開催し、計110人が参加した。現在は道内客が中心だが、「将来は東京など道外からもツアー客を呼び込める可能性がある」(戎谷社長)と期待を寄せる。今月28日からは計5回のツアーを計画する。

ワインの本場である仏ブルゴーニュ地方では、週末になるとワイナリーを巡るツアーバスを定期運行する。阿部氏は「道内でもツアーバスの定期運行などでワインツーリズムを普及させたい」と意気込む。

道内を含め、消費者の認知度がまだ低い道産ワインにとって、消費者との距離を縮める取り組みは重要。日本清酒(札幌市)が経営する余市葡萄酒醸造所(余市町)は昨年、ワイン用ブドウのオーナー制度を始めた。

5万円の会費でブドウの木5本のオーナーになると、そのブドウから造ったワイン20本がもらえる。国内外から30人のオーナーが集まり、余市町のブドウ畑にはオーナーの名札がそれぞれ飾られる。専用の木樽(たる)を用意し、今年収穫するブドウを醸造する。

オーナーはブドウの摘み取りや選果を体験でき、日本清酒総合企画部の佐藤哲康部長は「多くの人に余市ワインの良さを理解してもらえれば」と期待する。今後もオーナーを募る計画だ。

道内でワイナリーが増えるなか、ファンをいかに育てるか。観光業や飲食店、自治体などを巻き込んだ活動が求められている。

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