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北海道、「理想のワイン」開拓地に

北海道が国内最大のワイン用ブドウの産地として、全国の注目を集め始めている。道外から就農するブドウ農家が相次ぐのも、ワイン産地としての潜在力が高いからだ。既存のワイナリーを巻き込み、栽培や醸造技術に磨きをかける。道内各地のワイナリーを巡るワインツーリズムも定着しつつあり、ワイン産業のすそ野が広がってきた。

岩見沢市栗沢町に広がる一面の田園を見渡す丘。チョウやトンボが舞う丘の斜面で、一人の米国人が農作業にいそしむ。名前はブルース・ガットラブ。昨年3月、約1万5000平方メートルの農地を取得し、ワイン用ブドウの品種であるソーヴィニヨン・ブランとピノ・ノワールの栽培を始めた。

ガットラブ氏の前職は栃木県足利市の醸造所「ココ・ファーム・ワイナリー」の醸造責任者。ココ・ファームのワインは洞爺湖サミットの食事で使用されるなど、同氏の醸造技術は国内で高く評価された。

だが「自分らしいワインを造ってみたい」と、自らブドウを栽培してワインを造ることを決意。国内外のワイン産地から、「冷涼な気候でブドウの栽培に適した」北海道を選んだ。

「土壌の力を引き出そう」と化学肥料は使わず、有機栽培にこだわる。チョウが畑で舞うのも、除草剤を散布しないからだ。

ワイン用のブドウは苗を植えてから初めての収穫まで約3年、醸造して出荷するまでさらに約1年かかる。ガットラブ氏のワインの初出荷は2013年以降になる予定。「会話が弾み楽しく飲めるワインにしたい」と農作業にも力が入る。

ガットラブ氏のように北海道にワイン産地の可能性を求め、道外から移住したり、独立したりしてブドウ栽培に乗り出す農家が増えている。多くがワイン醸造やブドウ農園で働いた経験者だ。

 品質への業界関係者の期待も大きく、道産ワインに詳しいワインバー「ランス」(札幌市)の吉島久晴氏は「世界に通用するワインを生み出せるかどうかの転換期」と強調する。

道内有数のワイン用ブドウの産地である余市町登地区。今年4月から約5400本のピノ・ノワールの有機栽培を始めた曽我貴彦氏の畑では、自前の醸造所の建設が進む。

ガットラブ氏と同じくココ・ファームから独立し、「日本の食文化に合った国産ワイン」を目指して、北海道に移住した曽我氏。醸造過程で市販の酵母を使わず、欧州では伝統的な野生酵母によるワイン造りを計画する。

「北海道のワインはおいしい」と曽我氏ら道外の関係者が注目するきっかけになったのがナカザワヴィンヤード(岩見沢市)だ。妻とブドウの有機栽培に励む中沢一行氏は東京出身だ。8年前、道内のワイナリーから独立して、現在は道内外で約4500本のワインを販売する。

ワインの味わいは「ブドウの品質で8割方が左右される」(吉島氏)。それだけに有機栽培にこだわる新しいブドウ農家の登場は、北海道産ワインの品質向上にもつながるとの指摘は多い。一方でワインの醸造免許は製造量や経験などの要件が多く、取得は難しい。現在も自前の醸造所を持てず、他のワイナリーに醸造を依頼する農家は少なくない。

そこでガットラブ氏は全国でも珍しい、地域の農家が共同利用できる醸造所建設の構想を温める。自前の醸造所を持たないナカザワヴィンヤードも参加する意向で、「栗沢町をワイン産業のインキュベーター(ふ化器)にしたい」(ガットラブ氏)。

道内各地で質・量ともにワインの大地になる芽吹きが育とうとしている。

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