2018年6月23日(土)

電力逼迫、道経済に懸念 泊が止まる日(下)
夏場の節電要請は不可避か

2012/5/3 6:00
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 北海道電力の泊原子力発電所3号機(泊村)が5日に定期検査に入ると、国内の原子力発電所はすべて止まることになる。夏、冬の需要期には電力不足が不安視されるが、経済や市民生活への影響はどうなるのだろうか。

 「節電をお願いせざるを得なくなるかもしれない」。北海道電力は4月末、初めて節電要請の可能性に踏み込んだ。北電は最終判断を「5月中」としているが、道内での電力供給力の積み増しは限界に近づいており、道内経済界には既に「節電要請は不可避」との見方が広がっている。

 北電によると2010年並みの猛暑の場合、8月に3.1%(16万キロワット)の電力が不足。平年並みの暑さで供給予備力はほぼゼロとなるが、火力発電所などのトラブルによる突発的な停電を避けるため、最低でも5%程度の供給予備力を確保する必要があるとされる。

 しかし、自力で供給力を増やすのは限界に近い。風力や太陽光発電は自然条件次第で出力が変わる。緊急時に企業に電力使用抑制を求める需給調整契約もあるが、あらかじめ供給力として計算に入れるのは難しい。

 需給逼迫時は最大60万キロワットまで東京電力などから電力融通を受けることもできる。だが、「本州の需給も厳しく、節電要請をした上の緊急措置になる」(経済界関係者)との見方が強い。

 北電の公表資料によると、昨夏に想定供給力485万キロワットを需要が超えたのは9月1日と16日の計2時間で、猛暑だった10年でも48時間だった。節電要請などを前提に考えれば、原発稼働なしで夏場を乗り切ることも可能とみられる。

 ただ、節電は製造業を中心とした影響が大きい。一部企業は既に夏場の生産調整の検討を始めているものの、泊原発の再稼働がなければ冬場はより厳しい電力需給を乗り越える必要がある。「夏場だけなら良いが、冬場まで原発が止まるとなれば影響は甚大だ」(金属部品製作会社社長)。企業の間には不安が広がりつつある。

<北大大学院・奈良林教授に聞く>

奈良林直・北大大学院教授

奈良林直・北大大学院教授

 原子炉工学を専門とする北海道大学大学院の奈良林直教授に聞いた。

 ――泊原発3号機が止まり、国内の原発が全停止する。

 「昨年から今年にかけての冬は泊原発3号機が稼働しており、北海道で電力不足の問題はなかった。しかし、夏場は冷房需要が跳ね上がる。平年並みの気温でぎりぎりの供給力を確保したとしても、代替電力の火力発電所は機器トラブルが多い。猛暑になる可能性もあり、節電などの対策を講じなければ夏でも電力不足になる懸念は大きい」

 「暖房で電力需要が夏以上に高まる冬場はさらに深刻だ。万が一にも停電すると、製造業を中心に多大な影響が出るほか、暖房などが止まり、道内では凍死する人が出かねない」

 ――稼働中の原発が全停止した例はあるのか。

 「ソビエト連邦(現ウクライナ)のチェルノブイリ原子力発電所の事故の4年後、ウクライナで12基あった原発がすべて停止した。脱原発に向けた国民の意識が高まったためだ。それまではおよそ電力の半分が原発だったが、ロシアから天然ガスの供給を受け、電力を賄おうとした」

 「ところが、電力供給が不安定となり、停電が頻発。工場の生産が停止したり、暖房が稼働しなくなったりする事態を招いた。そのため製造業などの海外流出を招き、経済が悪化。失業者が町にあふれた。天然ガスの費用をロシアに払うことが難しくなり、結局は原発を再稼働した。経済の停滞は東日本大震災の被災地の復興を遅らせることになる。日本はウクライナの先例から学ぶ必要がある」

 ――代替電力として火力のフル稼働が続く。

 「原発が再稼働しない限り、火力に頼らざるを得ない。ただし、原油などの化石燃料は埋蔵量に限りがある。産油国でも自国内の原油消費量が増え、海外販売に原油を回すために火発に代わり原発を造ろうとする動きもあるようだ。将来も安定して日本に原油が回るかは不透明だ」

 ――自然エネルギーの導入拡大を目指す声が高まっている。

 「今の技術力で、全原発の電力を自然エネルギーで賄うのは不可能。欧州では太陽光や風力が普及しているが、全体の電力供給からみると割合はわずか。太陽光は発電コストが高く、発電事業者が経営悪化に苦しんでいるという問題もある」

 「脱原発方針を打ち出したドイツなどは陸続きの他国から電力融通できる利点がある。島国の日本とは違うことを認識しなければいけない」

 ――原発再稼働へのハードルは高そうだ。

 「まだ福島第1原発の事故原因や経過の知見がしっかりとした形で国民に示されていない。原因が何で、再発防止策が何か、原因究明とストレステスト(耐性調査)の議論が同時並行で進んでしまった。これでは国民の理解を得るのは難しい」

 「電力会社が単体で原発事故の原因と対策を道民にいくら説明しても、理解を得るのは難しい面がある。政府内も原発を巡る考えが揺れ動いているように見える。まずは国が事故の原因と対策をしっかりと国民に示し、再稼働に向けた指導力を発揮してほしい。特に道内では冬場に暖房需要が不可欠。その前に原発を再稼働させる道筋をつけることが求められる」

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