長野電鉄屋代線、きょう90年の歴史に幕
補助金頼み限界

2012/3/31付
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 「もう最後の機会だと思って乗りにきた」「自宅が沿線。なくなると寂しくなります」――。3月下旬、千曲市の長野電鉄屋代駅は別れを惜しむ住民やファンらでごった返していた。かつては生糸を主に運ぶ商用路線として栄えた長野電鉄屋代線だが、31日で90年の歴史に幕を下ろす。屋代線の廃線は少子高齢化時代の地方鉄道のあり方に改めて課題を投げかけている。

屋代駅は別れを惜しむファンらでにぎわった(3月29日)

 須坂―屋代間を走る屋代線は利用者減で収益が悪化する一方、設備の老朽化が進み、2011年度以降8年間で30億円以上が必要となっていた。長野電鉄はホテルなど他部門の収益で屋代線の赤字を補ってきたが「多額の設備投資を賄う体力はなかった」(同社)。

■地元まとまらず

 屋代線の輸送密度(1日1キロ当たり平均輸送人員)は463人(09年度)。02年に廃線となった同社木島線(信州中野―木島間)と比較しても3分の2の水準だ。同社の申し出で長野、千曲、須坂の沿線3市、住民らは09年5月に法定協議会を組織。今後の運営について検討したが、11年2月に廃止を決めた。

 「投資以上の便益が見込めない」が協議会の結論。マイカーの普及や少子高齢化による通学客の減少に加え、屋代線の場合「沿線が3市にまたがるうえ各地域で交通事情も異なり、地元の熱意の高まりに欠けた」(複数の関係者)ことも響き、地方鉄道の維持の難しさを突きつけた。ただバスに代替すると利用者は減り、街全体の活気が損なわれるケースが後を絶たない。廃線後の街づくりには課題も多い。

 県内でも上田電鉄(上田市)別所線の年間利用者数は20年で3割減少。アルピコ交通(松本市)上高地線も2割減った。屋代線と同様、経営状況は予断を許さない。ただ両線では沿線住民や自治体が存続を支援する姿勢が際立っている。

 「一度失った鉄道は取り戻せない。地域の資源として守っていくべきだ」と上田市地域交通政策課の翠川潔課長は強調する。同市では60年代以降、丸子線や真田線などが次々に廃止された。別所線も幾度となく存廃議論が持ち上がったが、存続を求め沿線住民が別所線利用を促進するなどの運動が功を奏し「ここ数年は減少に歯止めがかかっている」(上田電鉄の原勝美運輸部長)。

 国や自治体、事業者が安全対策の設備投資を分担する国の枠組みに加え、同市が05年度から独自に導入しているのが鉄道用地などの固定資産税を補助する制度だ。国が地方鉄道再生のために打ち出した、自治体がインフラを保有する「上下分離方式」の考え方に近い。

■老朽設備が重荷

 松本市も「鉄道は公共サービスに近く、行政が腹をくくって支援する」(交通政策課の小林浩之課長補佐)構え。

 残る県内の私鉄は別所線と上高地線に加え長野電鉄長野線、第三セクターのしなの鉄道(上田市)の4路線。各線とも線路や車両の老朽化による多額の設備投資が迫っており、自治体財政が厳しさを増す中、現在の補助金頼みの経営が続けられるかどうかは不透明だ。

 「通勤・通学客の利用促進や、イベントにも力を入れる」(アルピコ交通の藤松美徳鉄道事業部長)といった事業者の努力はもちろん、上下分離方式も含めて時代にあった新たな鉄道のあり方を考えていく必要がありそうだ。

(学頭貴子)

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