津軽海峡、つながる経済圏 新幹線北へ 東北全通1年(中)
函館延伸へ備え着々

2011/12/2付
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11月25日、東京・銀座のレストランで「津軽海峡食景色」という一風変わった商談会が開かれた。青森県と北海道函館市にある20社が提供した素材を有名シェフの熊谷喜八氏が料理した。百貨店や外食など43社の仕入れ担当者に振る舞い、売り込もうという試みだ。

みちのく銀は青森と函館の食材を同時に売り込む商談会を開いた(東京・銀座のレストラン)

■両岸の産品融合

主催したのは津軽海峡の両岸に店舗網を持つみちのく銀行。杉本康雄頭取は「4年後に新幹線は新函館駅まで延び、東京から4時間くらいで行けるようになる」と紹介し「青森と道南の食材を全国に紹介し、観光も含めた津軽海峡経済圏をつくりたい」とあいさつした。

例えば「豚肉のがごめ黒酢煮」は豚肉が青森産、調味料は中山薬品商会(函館市)の製品だ。がごめ黒酢は主に青森産リンゴを使っており、今後は青森名産のカシスやニンニクとの組み合わせも検討する。中山一郎代表取締役は「新幹線延伸は函館の物産や観光を売り込む好機」と期待する。

みちのく銀は4月、函館と青森県弘前市の両商工会議所を仲立ちして津軽海峡観光クラスター会議を発足させた。同行の担当者は「異国情緒あふれる函館と城下町の弘前など異なる魅力を組み合わせた周遊ルートをつくれば、どちらにも波及効果が出る」と力説する。

実際、人の動きに変化が生じ始めている。新青森駅(青森市)から特急で約2時間の函館市では東北や北関東からの観光客が増えた。4~10月に五稜郭タワーを訪れた修学旅行客は小学生が前年同期比14.7%増の2万5030人で、中学生は2万6849人で16.7%増えた。岩手県や宮城県などからの生徒が多いという。

2015年度に開業する新幹線の新函館駅(仮称、北斗市)は新青森駅と約40分で結ばれる。東北各県と函館市にはそれぞれ空港があり、津軽海峡は2つのフェリー航路で結ばれている。新幹線と組み合わせた「立体観光」(青森県の三村申吾知事)を展開できれば、西日本や韓国、台湾などからも旅行者を誘致しやすくなりそうだ。

■視線の先は札幌

函館延伸には技術的な課題も残る。新幹線が高速で走行すると、青函トンネル内などですれ違う貨物列車が風圧で最悪の場合は脱線する恐れがある。北海道旅客鉄道(JR北海道)や国土交通省は新幹線の減速や、安定した走行が可能な新幹線型車両に貨物列車を載せる「トレイン・オン・トレイン」の運行を検討している。

札幌延伸も現実味を帯びてきた。事業費は約1兆5000億円と巨額だが、北海道からの要望が強く、国交省と財務省が新函館―札幌駅間を含む整備新幹線の新規着工を年度内にも認める方向で最終調整に入った。「一大消費地である札幌市とつながれば、東北にも大きな商機だ」。北海道商工会議所連合会の高向巌会頭はこう強調する。

青森県内には北海道への延伸で「観光客が青森を素通りするのではないか」と懸念する声もある。一方、函館の市役所や企業は青森で開かれる物産展に常連として参加するなど、早くからPRに動いてきた。東北の官民も市場としての北海道を開拓する努力が求められそうだ。

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