実るパプリカ、苦難越え 東北 明日へつなぐ(1)

2012/1/5付
保存
共有
印刷
その他

震災後の断水時期に手作業で水をやり、育てあげたパプリカを手にする「ベジ・ドリーム栗原」のスタッフ(宮城県栗原市)=写真 浅原敬一郎

震災後の断水時期に手作業で水をやり、育てあげたパプリカを手にする「ベジ・ドリーム栗原」のスタッフ(宮城県栗原市)=写真 浅原敬一郎

奥羽山脈を望む高原地帯。巨大な温室で色とりどりのパプリカが実る。農業生産法人、ベジ・ドリーム栗原(宮城県栗原市)の温室は建設面積4万2000平方メートルと日本最大級のパプリカ栽培施設だ。23億円を投じて室温や湿度を制御する最新設備を導入。2010年6月に完成した。

国内で消費されるパプリカは大半が輸入物で、国産は5%にすぎない。輸入を手掛けていた豊田通商が食の安全・安心志向を強める顧客の要望を受けて自社栽培を検討。冷涼な気候の栗原市を適地と判断し、子会社の豊通食料(東京・港)と地元農家の共同出資で農業生産法人を設立した。

東日本大震災が起きたのは初収穫のピークを迎えた時だった。養液をためるタンクや配管が破損。パプリカに自動で養液を供給できなくなり、全滅の危機に直面した。手塚祐賢・農場長(41)は「人の手で1カ月間、毎日水をまいた」と振り返る。職員総出の人海戦術で守ったパプリカが今、収穫期を迎えている。

同法人の代表取締役を務める豊通食料の笹川徹・食品本部長(56)は「通年収穫を可能にした世界初の施設」と胸を張る。広大な温室を4区画に分け、時期をずらして栽培し安定供給する。IT(情報技術)の活用や栽培方法の工夫で生産効率も従来の2倍以上に高めた。パプリカ生産で日本一を目指し、温室の増設も検討中だ。

パプリカ栽培を始めた背景には、日本の農業に対する危機感もある。全国の農業就業者の平均年齢は65歳を超え、担い手不足は深刻だ。「地元の若い人と連携して農業が生き残る道を探りたい」(笹川氏)。震災を乗り越えた最先端の温室は農業への夢を託した実験施設でもある。

東日本大震災の発生から10カ月。復興への道は平たんではないが、明日に向けて着実に歩を進める被災地の今をたどる。

電子版の記事が今なら2カ月無料

保存
共有
印刷
その他

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]