「大衆演劇の殿堂」筑豊の芝居小屋・嘉穂劇場が開場80年

2011/1/4付
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福岡県の筑豊地方で「大衆演劇の殿堂」として知られる嘉穂劇場(同県飯塚市)が2月、開場80年を迎える。これに合わせて、往年の名俳優や歌手が登場した公演のポスターなどを紹介し、旧産炭地の娯楽を支えた歴史を振り返る展示会を開催。韓国、中国を筆頭に海外観光客の誘致にも乗り出すなど、新時代の芝居小屋像も模索する。

登録有形文化財の指定も受けた嘉穂劇場。2階自由席から見た舞台

登録有形文化財の指定も受けた嘉穂劇場。2階自由席から見た舞台

嘉穂劇場は花道や回り舞台などを備えた江戸情緒の漂う歌舞伎様式の芝居小屋で、1931年(昭和6年)に完成した。

「舞台や客席の柱はほぼ建築当時のもの。外観もほとんど変わっていません」。同劇場を運営する特定非営利活動法人(NPO法人)嘉穂劇場の理事長、伊藤英昭さん(61)が話す。2006年には国の登録有形文化財の指定も受けた。

現代と比べ、娯楽の少ない戦前から戦後の高度経済成長にかけての時代。同劇場は時代劇や歌謡ショーなど様々な公演で連日盛況だった。「舞台にリングを作り、力道山がプロレスをしたこともある」(伊藤さん)。美空ひばりや藤山寛美ら歴代スターも舞台を踏んだ。

2月6日~3月17日に開く「80年の歴史特別展示」では、同劇場の来し方を彩る名興行の写真やチケット、観客呼び込みのために劇場外に掲げる「招き絵」など100点弱を一堂に集める。

「現役継続」に力を注ぐ嘉穂劇場の伊藤英昭理事長

「現役継続」に力を注ぐ嘉穂劇場の伊藤英昭理事長

現役の芝居小屋として運営を続けるための新たな基盤作りにも、開場80年を節目に取り組む。重点的に進めるのは観光と観劇の組み合わせだ。

昨年、英中韓の3カ国語を併記したパンフレットを作製。今後、国内外の旅行会社や自治体などにPRし、近年増加するアジアから九州への観光客の誘致を目指す。単なる施設見学ではなく、地元の和太鼓集団の演奏など、日本の伝統的な舞台芸術を実体験できる拠点として売り込む方針だ。

伊藤さんが劇場の「現役」継続に力を注ぐ背景には、昨年8月に91歳で亡くなった、母で元劇場主の英子さんへの思いがある。

創設者の娘として長年劇場の経営を担い、親しみを込めて「お嬢」と呼ばれた英子さん。03年に飯塚市を襲った水害で劇場が半分水没しても、「ここで大衆演劇の歴史を絶ってなるものか」と再起をかけた。

「芝居小屋は、そこで芝居をしてこそ生きる」と伊藤さん。これからは「自主興行の企画から観光とのリンクまで、劇場の運営を多角的に担える次世代の人材を育てていきたい」と前を見据える。

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