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ポスト「久保田」? 辛口ブーム過ぎ次の手模索

淡麗辛口の日本酒をひっさげて一時は全国を席巻し、「地酒王国」とも呼ばれた新潟。だが出荷量はピークをつけた1996年以降は右肩下がりの傾向が続き、今では半分近く減少している。新潟県以外でも高い知名度を誇る地酒が増え、淡麗辛口自体が時代遅れとの声も。新潟の酒蔵では生き残るため次の手を模索する動きも出ている。

客の嗜好を知る

菊水酒造のアルミ缶酒は海外でも人気を集めている

「こちらは冷やしていただくといいですよ」

東京・新宿にある百貨店の地下食品売り場。店頭に立って訪れた客に日本酒の説明をしているのは新潟県内最大の酒蔵、朝日酒造(長岡市)が送り込んだ営業マンだ。同社の細田康社長は、社員自らが店頭に立つことで「お酒の選択権が女性にあることなどがよく分かるようになった」と冗談交じりに話す。

30年近く前、品質の高い日本酒として「久保田」を売り出した同社は、その良さを説明するため特定の酒販店のみが久保田を扱えるシステムを構築した。「久保田会」に加盟した酒販店は底力を発揮。新潟を代表する銘柄へと育て上げる原動力となったが、同時に「酒屋さんにお願いしているのでこちらは何もしなくていいシステムになってしまった」(細田社長)。実際に消費者が品定めをする現場に行き、客の嗜好を知ることで、こちらから提案するための力をつけようとしている。

「Sip A Sake(酒をすすろう)」。今年6月、米紙で特集された「海に持って行くといいもの」特集の中に、アルミ缶に入った日本酒が紹介された。赤い缶には「ふなぐち菊水一番しぼり」の文字。国内で初めてアルミ缶酒を発売した菊水酒造(新発田市)の銘柄だ。

狙いは海外と若者

同社は2010年に米カリフォルニア州に現地法人を設立。3人の社員を常駐させて営業に取り組んでいる。留意しているのは「味わいの違いがあるラインアップを用意する」(菊地秀一取締役)こと。同社の主力は純米吟醸酒だが、新聞で取り上げられたアルミ缶酒はアルコール度数が高く濃厚な味わいが特徴だ。さらに「パーフェクト・スノー」という名称でにごり酒も出している。

輸出は増加基調で、最近は米国以外にも注力している。昨年夏にはタイに事務所用の部屋を確保し、定期的に人を送っている。「暑い国なのでキレのある辛口タイプが好まれるのではないか」(菊地取締役)と戦略を練っている。

潜在的な成長市場は国内にもある。代表例が若者。宝酒造が先ごろ発表した意識調査によれば、「今後、日本酒を飲む量は増えると思う」との回答は20代で41%、30代で27%を占め、全世代(23%)を上回る関心を示している。

吉乃川(長岡市)が10~12月に行ったのが「日本酒美人ARプロジェクト」。AR(拡張現実)を使い、対象商品のラベルにスマートフォン(スマホ)をかざすと画面に現れた女性が商品をPRする映像が見られる。キャンペーンを知って西日本などからの注文も入ってくるようになった。

朝日酒造の細田社長は最近、「社員に向かって会社の寿命30年説を話している」という。同社が久保田の販売を始めてそろそろ30年。辛口ブームが起き、新潟の地酒が注目を集めるようになった1980年代から数えれば、既に30年を超えている。次の30年に向けてどう生き残りを図るか、模索が続く。

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