大和新潟店が閉店 老朽化、顧客支持失う
百貨店の大和新潟店(新潟市)が25日、66年間の歴史に幕を閉じた。前身の万代百貨店を含めると73年の間、新潟市民の暮らしと共に歩んできた同店。地元商工関係者はかつての地域一番店の閉店を惜しみ、最後の買い物に訪れたなじみ客が記念撮影する姿も見られたが、老朽化が進んだ施設の集客力は弱く、客離れを止められなかった。県内消費は依然低調で百貨店を取り巻く環境は厳しい。大和撤退後も小売各社は引き続き顧客開拓に迫られる。
閉店時刻の午後7時、大和新潟店の入り口前に多くの客らが集まった。閉店セレモニーで北村秀明店長が「閉店でご迷惑をおかけすることをおわび申し上げます。ご愛顧いただきありがとうございました」とあいさつすると、周囲から拍手がわき起こった。
閉店に先立ち新潟市の篠田昭市長は25日の定例記者会見で、「長く市民から親しまれていたので大変残念。商店街と協力してにぎわいを絶やさないようにしたい」と述べた。新潟商工会議所の敦井栄一会頭は「学生時代に通学路として毎日通った思い出深い場所」と回顧する。同商議所などは8月から来年3月まで大和の1階部分の一部を、公共施設として暫定利用するが、その後の活用策は未定。「本格的な跡地利用と古町再生に向け、関係者が一層奮闘しなくてはならない」と話す。
古町地区などの市中心市街地の商店街で構成する新潟中心商店街協議会の古舘邦彦理事長は、JR新潟駅~古町間のバスが半額となるワンコインバスの利用が好調なことを受け、「(今後は)商店街の各店が負担して、バスを利用した来店客にバスの割引券を渡すなどのサービスが必要になる」と活性策を模索する。
大和新潟店はここ数年、来店客が減少。売り上げ不振が続き、2010年2月期の売上高はピーク時の35%の水準にまで落ち込んだ。赤字は10年近く続いた。
今も戦前の建物を一部使用するなど老朽化が進み、店内は通路の狭さや内装の古さが目立った。経営体力不足で改装に踏み切れず、それが客離れにつながる悪循環となった。高級感を出して他社と差異化するにも「海外の高級ブランドは出店する店を選ぶ」(斉藤尚善専務)ため、ブランド誘致が難しかった。
40年ほど前に大和で勤務していたという60代の女性は「一流ブランドの店がなかった。若年層の集客策が不十分だった」と話す。バスで月2、3回来店するという新潟市内の60代の女性は「地下の食品売り場の魚の鮮度が良かった。閉店で不便になりそう」と不安げな表情をみせた。