培った技 新分野で開花 新生北関東 激変ものづくり(下)
日本の技術革新支える

2012/3/24付
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創業1809年の油圧プレス機メーカー、小島鉄工所。高崎市郊外の工場で昨年末、プレス機以外では約20年ぶりの新製品が生まれた。大型のリング状金属部品を造るリングローリングミル。精度が高く操作も簡単とあって、自動車部品や鍛造などのメーカーから続々と引き合いが来る。

小島鉄工所は得意の油圧技術を磨き新分野に進出した(高崎市の八幡工場)

同社が培ってきたのは、油などの力で対象物を変形させるプレス技術。1905年にしょうゆ醸造用水圧プレス機を製造したのが始まりで、戦前は砲身などを自ら生産し、戦後は鉄鋼、自動車、電機など向けに油圧プレス機を納めてきた。

新製品はリングを熱し、油圧で動くロールで圧延しながら直径を大きくする機械。油圧プレスの技に、外部から技術顧問を招いて制御技術を高めることで、プレス機に次ぐ事業の柱ができた。

本社工場では約100人の熟練工が製品をひとつずつ組み立てていく。児玉正蔵社長は「我々が手掛けるのは、日本の製造業を支えるものづくりだ」と力を込める。

日立製作所の茨城県日立市、三洋電機の群馬県大泉町などの企業城下町を抱える北関東3県。生産機械や切削加工など「ものづくりの基盤」を支える地場企業が多いのが特長だ。こうした企業が技を磨くことで、新分野に挑んだり、新製品を開発したりしている。

■応用で精度向上

自動車部品メーカーに金属パイプを納める湯原製作所(栃木県さくら市)は最近、エンジン部品に使うパイプを超音波で曲げる技術を開発した。4年ほど前、栃木県主催の超音波を使った切削加工方法などを紹介するセミナーに同社の技術者が出席したのがきっかけ。そこで技術者は「曲げにも応用できるのは」と思いつき工夫を重ねた。

通常、パイプは油圧で曲げる。何カ所も曲げる複雑な部品ほど寸法がばらつき不良品が生まれる。同社は毎秒数万回の振動を当てると「摩擦抵抗が少なくなり曲げの精度が高まる」(湯原正籍社長)ことを見いだした。

夏以降、自動車部品への応用を始める。「航空機のエンジンはパイプだらけ」なため、この分野への参入も意欲を示す。

■玩具から医療へ

玩具製造で蓄えた樹脂を扱う技術を医療分野で開花させたのが、栃木県日光市の佐藤化成工業所。鼻腔(びこう)に入れるインフルエンザ検査用綿棒で出荷数を増やし、月産能力は「200万~250万本」(佐藤役男社長)に達する。

通常の綿棒はコットンやレーヨン製だが、佐藤化成のものはポリエステル製。ウイルスを採取しやすく、検査の精度が向上する。ポリエステルの綿から繊維を棒状に細長く取り出す技術が至難だったがこれに成功した。

一見、開発の余地が乏しい食品分野でも技を磨く余地はある。干しイモなどを生産する幸田商店(茨城県ひたちなか市)は干しイモを使った甘味料の開発に取り組む。

表面が白く硬まった干しイモは商品価値を落とすため従来は廃棄していた。だが長年手掛けてきたイモの加工に、きな粉の生産技術を組み合わせることで、甘味料として生かす発想が生まれた。

熱風を微調整しながら吹きかけて水分を飛ばし、適度な硬さにする。さらにきな粉生産用の粉砕技術を磨いて、甘味料に適した粒の粗さや均質性を維持できるようにした。砂糖より低カロリーなのが売りものだ。

鬼沢宏幸社長は「既存の技術もうまく深掘りすれば商品開発の道が開ける」と話す。事業の種探しの方法は新しさを追うばかりではない。自らの技術を練り上げることで、局面が開ける。

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