遊休農地で放牧広がる 雑草・鳥獣対策に効果

2010/7/24付
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長野県内の遊休農地の活用策として牛や羊、豚などの放牧が広がってきた。農家にとって雑草を除去する手間が省けるほか、イノシシやシカ、サルなどが農地を荒らすのを防ぐ鳥獣害対策にもつながる。加工食品をはじめ特産品づくりの取り組みも進む。県などは遊休農地の拡大を食い止める方策として後押しする。

今月20日、南木曽町の約0.3ヘクタールの遊休農地で、2頭の牛の放し飼いが始まった。人の背丈ほどにススキなどが伸びている。「これだけ大きくなった雑草もきれいに食べてくれる」。県の木曽農業改良普及センター(木曽町)の松盛真直さんは笑う。

県は放牧が可能な遊休農地を探し、牛の繁殖農家を仲介する取り組みを始めた。南木曽町のこの農地の場合、秋には雑草がかなり減るという。同町を含む木曽地域でこのような形で、牛の放牧が広がる。

県内の遊休農地の中には、イノシシが掘り返した大人のひざ丈ほどの穴が目立つ。雑草が多いと野生動物の隠れ家となり、作物を育てている周辺の農地が荒らされかねない。牛などを放牧すれば被害を減らす効果が期待できる。

きれいになった農地では野菜をつくる農家もあるが、それぞれの農家の判断で栽培している。「名産となる作物が増えれば、町おこしにもつながる」と南木曽町産業観光課の宮川護さんは話す。

今夏、全国的にも珍しい取り組みが始まったのは須坂市。約1ヘクタールの遊休農地を活用し、羊の雌10頭と雄1頭を放し飼いにした。羊を繁殖し、2年後、高級食材として販売する計画だ。

地元農家などでつくる信州豊丘めん羊飼育協議会が畜産系の大学などと協力した事業だ。放牧式には須坂市の三木正夫市長も駆け付け、期待の大きさを裏付けた。比較的小さい羊は年配の人でも育てやすい。参加農家から出資金を募り「事業化に真剣に取り組む人だけを集めた」(協議会の坂田袈裟義副会長)という。

長野県JAグループで畜産品加工販売を手掛ける長野県農協直販(長野市)は、2008年から信濃町の黒姫高原の遊休農地で、豚の放牧やトウモロコシ栽培に協力している。

地元農家が約2ヘクタールの農地でトウモロコシを栽培し、収穫時期に最大200頭の子豚を放牧する。豚は収穫後の茎などの食べて育つ。雑草を食べてもらうことで翌年の畑の準備につながる。

長野県農協直販は育った豚を「黒姫高原放牧豚」としてハムなどに加工し、販売している。一部は日本航空のファーストクラスの食材として選ばれるなど品質への評価は高い。ただ大規模な豚の飼育に比べ、コスト面で競争力を維持するのは難しいという課題はある。

5年に一度の農林業センサスによると、長野県内の遊休農地は2005年で1万7094ヘクタールで、農地全体の17.5%に上る。面積で20年間で約1万ヘクタール増えた。今年の調査で増加に歯止めがかかっているか不透明だ。

農家の高齢化や後継者不足で耕作することが難しい農地は増えると見られ、対策は待ったなしの状況だ。遊休農地を減らす手段として放牧は有効と見られるが、継続性や採算性が課題だ。県内各地の取り組みはその試金石となる。

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