北関東の医療モール「空洞化」、需要見通しに甘さも - 日本経済新聞
/

北関東の医療モール「空洞化」、需要見通しに甘さも

内科や整形外科など複数の診療所や薬局が1カ所に集まる医療モールが空きテナントに悩んでいる。集客の目玉として北関東の新規商業施設などに相次ぎ開設されたが、思うように診療所が集まらない。中にはモール設置後ずっと"空洞"のところも。特に小児科や産婦人科といったニーズの高い医師の誘致が厳しく、環境面などで都心部との格差を指摘する声も上がっている。

「駅前の立地でも開業医集めは難しい」と話すのは全国で医療モールを運営する大林プロパティマネジメント(東京・港)だ。

同社は茨城県守谷市のつくばエクスプレス(TX)守谷駅前で医療モール「アワーズもりや」を運営するが、開業から1年以上が経過した今も5区画のうち2区画が埋まらない。「景気低迷の影響で医師の開業意欲が減っている。我慢強く入居を呼び掛けるしかない」と説明する。

県内ではつくば市の大型商業施設内「イーアスつくば」内にも医療区画があり、残り2区画が空いたまま。同施設の佐々木健雄支配人は「内科や歯科の応募は多いが、買い物客から要望が多い小児科や産婦人科の医師集めに苦労している」とため息をつく。

診療所2カ所だけの小規模型も含めれば全国1千カ所ともされる医療モール。医師にとって開業コストが低く、患者を紹介し合えるなどのメリットがあるが、開設後、入居ゼロのところもある。

前橋市中心部に2009年1月完成した医療モール併設型マンション(14階建て)は、1、2階の8区画が丸ごと空いたままで、入居のメドが立たない。

中心市街地活性化の目玉として、市は穴吹工務店系の施工会社に対して国や県と3億円の補助金を支給。医療モール構想を評価した上で穴吹に市有地を売却しただけに頭を抱える。医療テナントが入居しなかった場合は土地売却額の2割分を市に支払うという違約金の規定もあるが、完成から10年間は猶予があるため市も当面は様子見するしかなさそうだ。

診療所の入居が進まない背景には、周辺病院との競合や需要見通しで判断の甘さがあったと指摘する声が出ている。

複数の計画がある栃木県では、周辺住民や地元医師会などとの調整に難航している例もある。関係者の1人は「地域の診療所との競合や住民と地権者の思惑の違いなど、利害が複雑に絡み合って時間がかかっている」と打ち明ける。

医療モールの実績がある調剤薬局運営、エフアンドエフ(栃木県佐野市)の藤川欣洋社長は「中長期的視点で開業医らと信頼関係を築く努力が不可欠だ」と強調。医療モールを運営するメディヴァンス(東京・港)の河野康志社長は「医師は東京や千葉などのモールと比較した上で開設場所を決めている。人口の多い南関東の方が魅力的に映るのかもしれない」と分析している。

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン

権限不足のため、フォローできません