山形大研究拠点、欧州から有機太陽電池の権威招へい
山形大学が有機エレクトロニクスの世界的研究拠点を目指して建設中の「先端有機エレクトロニクス研究センター」の体制がほぼ固まった。有機太陽電池研究の第一人者、オーストリアのリンツ大学(ヨハネス・ケプラー大学)のN・S・サリチフチ教授が2011年1月にも山形大教授に就任する見通しとなった。同大の重要研究テーマの一つ、有機太陽電池部門の統括責任者に就く。第一線級の国内研究者も教授に招く考えで、印刷技術を応用した製造プロセスの開発などを目指す。
同研究センターは工学部(山形県米沢市)内に建設中。3つの研究テーマを掲げており、有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)部門は白色有機ELの開発で知られる城戸淳二同大教授、有機トランジスタ部門はフレキシブルディスプレーの研究者で8月にNHK放送技術研究所から招いた時任静士教授が率いる。
山形大は09年春ごろからサリチフチ教授に接触。当初は完全移籍を打診したものの待遇面などの条件が折り合わず、交渉は難航していた。今年9月に大場好弘工学部長らが渡欧して交渉した結果、リンツ大と兼任することで基本合意した。契約は11年1月1日付で、まず1月半ばに短期間来日する予定。将来は完全移籍を働き掛ける意向だ。
「特別連携卓越教授」と位置付け、日欧間を往復し、米沢には年間通算2~3カ月程度滞在する見込み。オーストリア在留中は電子メールなどで研究指導や意見交換を図る。印刷技術を応用した塗布型太陽電池が研究テーマの一つで、シリコン系太陽電池以上の発電効率と低コストを目指す。
山形大は当面、常駐できる研究リーダーをスカウトするため国内の有機太陽電池専門家を対象に教授を公募する。
サリチフチ教授はポリマー系有機薄膜太陽電池の世界的研究者で、他の研究者に1千回以上引用される論文を複数執筆している。リンツ大では太陽電池研究所の所長も務め、ベンチャー企業7社の設立に携わるなど実用化も重視する。山形大教授就任を機に地元企業との共同研究が進む可能性もありそうだ。
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