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「海はよみがえった」 岩手・山田湾カキ養殖いかだ

復興の現場2013夏(4)

「海はよみがえった」。三陸やまだ漁業協同組合(岩手県山田町)の上林実理事(64)は三陸沿岸有数のカキ産地、山田湾に浮かぶ養殖いかだを見つめながら言い切った。東日本大震災で壊滅的な被害を受けた山田湾のカキ養殖は、国の多額の予算と漁師ら懸命の努力で、復活を遂げようとしている。

8月上旬、上林さんの船で山田湾を巡った。浅瀬にカキ、沖合にホタテのいかだが並ぶ。震災で約3700台から約600台に減ったいかだは現在約2200台。漁師らが中心になり、地元の間伐材などで新しいいかだを組み上げる一方、流失を免れたいかだは針金で丁寧に組み直した。

いかだの数は震災前の約6割だが、復旧は「ほぼ終了」という。かつて山田町ではサケなどの漁業が不振となったため、養殖業への参入が相次ぎ、いかだが急増。海の栄養が不足して稚貝の成長が鈍る「密殖」が問題化していた。打開策はいかだの削減しかないと分かってはいたが、業者間の利害も絡んで実現しなかった。それが震災を機に「生産性を上げるため、密殖の解消に皆が合意した」。

 上林さんは身軽に大型いかだに乗り移る。いかだから垂らしたロープを機械で巻き上げると、立派に育ったカキが数十個。「カキの回りに大量のムール貝が付着して困っている」というが、これも密殖が解消し、栄養が十分行き渡るようになった証しだ。

震災で岩手県内の養殖施設は約2万7000台から約1万2000台に激減したが、水産庁の復興予算62億円を活用し、今年3月末までに約1万7000台まで回復した。なお復旧を進める地区もあり、来春には2万台になる見通しだ。

<現場メモ>
形態カキのいかだは主に木組みで縦5~7メートル、横20~25メートル程度。いかだ1台から海中に約7メートルのロープが最大150本下がり、カキが付着している
特徴約32平方キロの湾にいかだ約2200台が整然と並ぶ。潮の流れを考えた配置で、栄養の行き渡り方も向上した

課題も残っている。浜の処理場など漁港施設の復旧だ。震災前に6億円を超えていた三陸やまだ漁協のカキ出荷額は、処理場の未整備が響いて2012年度も1600万円にとどまった。今季も「どれだけ出荷できるか不透明」という。震災後に採苗したカキはすでに身が15~20センチに成長している。「あとは陸(おか)の整備を待つだけ」。よみがえった漁場で、漁師らは陸の工事の進展を待つ。

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