長野県内企業や大学「ものづくり体験」活況 未来の技術者に

2010/8/14付
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夏休みを活用して小学生にものづくりの楽しさを体験してもらう取り組みが長野県内企業や大学などで活発だ。子供のころから県の基幹産業である製造業に関心を持ってもらう。理工系離れが進む一方、製造現場の海外移転も深刻な状況。技術者を確保するには、早い段階から興味を育てることが欠かせない。

夏休みまっただ中の8月上旬、地元の小学生と保護者が省力機械メーカーのマルヤス機械(岡谷市)に集まった。同社が製造するコンベヤーの説明を受けたり、社員にコンベヤーを製造する工場内を案内してもらったりした。

「機械を動かすのが好き。面白いのでまた来たい」。コンベヤーの原理を知ってもらう小型キットの組み立て体験をした岡谷市の小学3年生、巻渕勇人君は目を輝かせながら話した。

この「家族ものづくり体験ツアー」はマルヤス機械の後、岡谷蚕糸博物館を訪問して糸取り体験をするという半日がかりの行程で3コースを用意した。初めてツアーを企画した諏訪圏工業メッセ実行委員会の清水義樹氏は「ものづくりの楽しさに触れて、将来は製造業に携わってほしい」と狙いを話す。

平日であれば受け入れ先の大学や企業などの負担を抑えられる夏休み期間は子供も参加しやすく絶好の機会だ。

長野市では「青少年のための科学の祭典」を7月31日~8月1日に開催、小中学生ら2000人以上が訪れた。ロボットの組み立てやモーターをつくるなど、実際にものづくりに触れるテーマが多いのが特徴。

主催者の中村正行・信州大学工学部教授は「実験装置などを見学するだけでは関心が低いが、体験できると子供は生き生きと取り組んでくれる」と話す。

飯田市では7月末、地元のシチズン平和時計で親子が時計組み立てを体験した。文字盤に絵を描いたり、針をつけたりと本格的な内容で、定員を大きく上回る応募があった。

各地で子供向けのものづくり体験イベントが相次ぐ背景には、技術者を早い段階から育成したいという狙いがある。文部科学省によると、2010年度、大学で理工系の学部に在籍する学生は全体の18.9%。10年前から3.6ポイント低下するなど理工系離れが深刻化している。

特に長野では理工系大学が少なく、卒業生も県外で就職するケースが多い。このため、経済界にも技術者不足を懸念する声が高まっている。

産業人材の育成に詳しい長野経済研究所の中村雅展・上席研究員は「中学生は製造業に関する情報が不足したまま工業高校か普通高校かの進路決定を迫られている」と指摘。「ものづくりに関心を持ってもらい、基幹産業の担い手を継続的に育成していく必要がある」と話す。

子供向けイベントは県内企業について理解を深めてもらう目的もある。昨年から体験学習の受け入れを始めたマルヤス機械の原保雄・企画促進課課長は「コンベヤーは地味なので地元でも知らない住民は多い。当社に関心を持ってもらい将来は入社してほしい」と話している。

製造業が長野県に根ざし、付加価値の高い仕事を続けるには早期に優秀な人材を育て、囲い込む取り組みが、県内産業界全体で欠かせない。(世瀬周一郎)

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