福島企業、除染ビジネス受注へ組合設立相次ぐ - 日本経済新聞
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福島企業、除染ビジネス受注へ組合設立相次ぐ

福島県で除染の作業を請け負うビジネスが本格化してきた。国や県内の市町村が発注する事業の受注に向けて、複数の民間企業が協力して事業組合を設立する動きが相次いでいる。政府は原子力発電所の事故で経営が厳しい県内の企業を除染事業では優先する考えで、発足した事業組合は人材の確保などを急いでいる。

「よくこれだけの工事をしていただいた」。

4月10日、細野豪志環境・原発事故担当相は福島市大波地区で工事を進める汚染土の仮置き場を視察した。仮置き場は壁の高さが5メートルある巨大プールのようなコンクリート製の容器で、同地区で発生した1万6000立方メートルの汚染土を貯蔵できる。工事は市内の業者が手掛けた。

福島市は県内で最も除染が進む先進自治体で、事業の発注が続く。昨秋、除染に着手し、2011年度は66億円の工事を発注して大波地区では市内32社が受注した。12年度も400億円の予定。市の公共事業は通常250億円程度といわれ、除染だけで1.5倍超の金額になる。政府は復興を支援するため除染では地元企業を優先する方針。福島市放射線総合対策課も「市内の業者が受注しやすいよう工夫する」考えで、事業規模などを小口にしている。

除染の受注を見込み、地元企業が事業組合などを設立する動きが相次ぐ。福島市の建設業者や測量会社など約200社は「福島市除染支援事業組合」を1月に発足した。同組合事務局の久保田清・福島県建設業協会県北支部事務局長は「住宅や公共施設の除染を受注したい」と話す。

経営の下支えに

県東部の南相馬市でも組合が発足した。避難区域以外で取り組む除染の受注に向け、市内の建設業者など35社が「南相馬市復興事業協同組合」を2月に設立した。同市は除染事業を一括して竹中工務店が中核の民間事業体(JV)に400億円で発注する予定。竹中が作業の期間や範囲を決め、同組合が協力する。

同組合の理事長を務める関場建設(同市)の関場啓社長は「住民が帰るようにする除染は(地元業者の)任務だ」と話す。同市の建設業者は東日本大震災後、原発事故による警戒区域などの設定で売り上げの落ち込みが続く。除染事業が受注できれば経営の下支えになる。

福島県経営金融課によると、除染の受注を目的に県内で設立した組合は6つ。いずれも地元の業者が連携した。組合設立の狙いは、発注額が大きく単独の受注が難しい事業を一括して得られるようになる体制を整え、大手ゼネコンと競争するため。また人海戦術が主体となる除染の作業に携わる人手も提供しやすくなる。福島市除染組合も「2000人は確保できる」(久保田事務局長)。福島県も今年度、約1万人の作業員を対象に講習会を開いて除染の知識を学んでもらうなど後押しする。

宮城に労力流出

それでも、人手の確保は難しいという声はある。復興事業が先行する宮城県へ、福島県の労働者が流出しているからだ。宮城の工賃は1日当たり1万5千~2万円とされ、福島の同1万円程度より高い。このため、人手確保を優先し、県内業者ではなく、大手ゼネコンへ発注する自治体も出始めている。

広野町は清水建設に発注した。地元からは「大手が受注することで、仕事が県外に流れる」(県内の建設業者)という不安の声もあるが、「必要な労務や資材については可能な限り地元から調達する」(清水建)としている。

除染事業は、原発事故で経営が苦しい県内企業にとって新たなビジネスチャンスになる。ただ、地元業者を優先するあまり作業が遅れたら、除染を前提とした避難住民の帰還も滞ってしまう。除染の進捗状況と県内経済に対する影響の間で、バランスを取りながら事業を進めるのが欠かせない。

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