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「東電さん」から是々非々の関係に(震災取材ブログ特別編)

福島支局から

2月下旬に福島県伊達市で開かれた東京電力福島第1原子力発電所事故からの生活回復を話し合うセミナーで、気になる言葉を聞いた。市が取り組んだ放射性物質の除染費用について、セミナーに参加した仁志田昇司・伊達市長が「"東電さん"に請求すればいい」と口にした。

「東電さん」

福島県内で取材しているとよく聞く言葉であるが、長年にわたって続いてきた福島県と東電との蜜月を象徴しているように感じる。復興元年といわれる2012年は「東電さん」からどう自立するかが福島県の課題になりそうだ。

東京電力と福島県の関係は古い。明治時代に県内に建設された水力発電所を戦後まもなく東電が引き継いだことから始まる。東電は現在、県内に15カ所の水力発電を持ち、首都圏へ電力を供給する。福島県は発電所の工事やメンテナンスで経済的に潤い、東電は電力を福島県に依存する。こうして持ちつ持たれつの関係がつくられた。

東電と福島県の関係がより深くなったのは、福島第1原発の計画が持ち上がった1960年代から。建設が始まった67年からは工事関係者が居住するようになり、地元住民も参加した。東電が福島第1原発45年の歩みを記録した「共生と共進」という冊子には当時の様子が記録されている。

「働く場所ができ、出稼ぎに行くこともなくなったので、大熊町全体が明るくなった。夜の10時、11時になっても商店街に灯りがともり、大勢の人たちが歩いていた」。原発が地域の活性化につながった様子がうかがえる。

原発建設に伴う電源3法の交付金も地元を潤した。福島県内の自治体が1974年から2009年までの36年間に受け取った交付金は約2700億円。毎年100億円近い金額が地元に提供された。交付金の使途も幅広い。福島県が発行する「原子力行政のあらまし」(2009年版)によると、小中学校の施設整備から福島空港の広報事業、サッカーによる国際人の育成支援まで入っている。「原発が来たらやめられない」という原発依存の体質になった。

しかし、原発事故を受けて福島県の佐藤雄平知事は原発に依存しない社会を目指す「脱原発」を表明。県内にある10基の原発の廃炉を求めたほか、県として交付金の受け取りも拒んだ。東電に依存した県政との関係も見直しつつある。

それでも、福島県商工会議所連合会の瀬谷俊雄会長は「東電とは40年のつきあい。縁切りはできない」と話す。交付金を受け取らなくても、賠償や除染などがある限り、東電との付き合いは続く。「お互いに意見を言い合って協調体制をとらなければいけない」と瀬谷会長は指摘する。

福島県の戦後は東電との関係なくしては語れない。その関係は原発事故をきっかけに大きく変わった。「東電さん」に象徴されるような依存体質から抜け出し、是々非々の関係を築く。復興を踏み出すには、そんな自立した対応が欠かせないのではないだろうか。

(福島支局長・竹下敦宣)

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