/

中井・東北大教授「多様な農家のあり方認めるべき」

復興の最前線に聞く

東日本大震災では岩手、宮城、福島の3県で約2万ヘクタールの農地が津波で浸水した。2011年度中に営農を再開できた面積は6%にとどまる。農地復旧の課題を東北大学先端農学研究センター長の中井裕教授に聞いた。

――津波被害を受けた農家の現状をどう見る。

中井裕・東北大先端農学研究センター長

「被災農家の状況は2対6対2と言われている。農業を再開した農家と廃業を決めた農家がそれぞれ2割。残りの6割は躊躇(ちゅうちょ)して一歩を踏み出せずにいる。農林水産省の経営再開支援事業で、がれき撤去などに農家が共同で取り組めば補助金を受け取れる。農業ではなく土木作業をしている状況だ」

――農業再開の課題は何か。

「農業は地域の風土、歴史、生態系などと密接に結びついている。農村の崩壊を避けるために、農業を継続しながら復旧を進める必要がある。経営再開支援金は作付けするともらえなくなる。農業を継続しながら復興を目指す農家を支援する仕組みが必要だ」

――塩害農地に菜の花を植えて除塩する「菜の花プロジェクト」に取り組んでいる。

「仙台市や宮城県岩沼市などの被災農地で、塩害に強いアブラナ科の植物を育てる計画だ。これまでの試験で、堆積したヘドロを取り除けば順調に育つことが分かった。アブラナ科の植物が土壌から塩分を吸収する効果を狙うとともに、菜種油を収穫して販売し農家の収入につなげる。菜の花が咲けば観光名所にもなる」

――農業再生における大学の役割は何か。

「現場から乖離(かいり)した概念は絵に描いた餅で役に立たない。研究だけでなく現場と結びついて仕事をしなければならない。産官学連携の枠組みの中で、大学はニュートラルな立場で要としての機能が求められる」

――各自治体の復興計画には農地の大規模化や植物工場の建設が盛り込まれている。

「農地を大型化すればコストが下がる。外国産の安価な農作物に打ち勝つだけでなく、海外に輸出できる可能性も出てくる。ただ、先端的な農業についていけず、取り残される農家もたくさん出てくる。大規模化が進んでいる米国でも6割は小規模農家だ。多様な農家のあり方を認めるべきだ」

(聞き手は仙台支局・村松洋兵)

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連キーワード

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン