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脱税「裏ポーク」の審査強化 店頭価格に影響も

豚肉の輸入審査が9日から厳格化される。海外の輸出業者と組んで、輸入豚肉に課す特殊な関税制度を悪用し脱税する業者が後を絶たず、国内の養豚団体から厳格運用を求める声があがっていた。通関手続きの遅れや国内での輸入豚肉の店頭価格への影響も予想されそうだ。

輸入豚肉「節税」、1000億円以上?

全国の税関は9日から、豚肉輸入業者に海外の輸出業者が豚肉を仕入れた価格を示す資料などの提出を求める。審査手法の突然の見直しや、第三者のコスト開示まで求める強硬なやり方に輸入業界には激震が走っている。

外国産豚肉には「差額関税」という特殊な関税が適用されている。様々な部位が一体になっている枝肉を輸入する場合、基準輸入価格は1キログラムあたり409.9円、部分肉は546.53円。輸入価格が基準価格を上回れば4.3%の従価税で済むが、基準を下回ると差額を関税として徴収する。

安価な肉を輸入すると差額関税が課されるため価格が上がり、国内流通は難しくなる。輸入業界では高い肉と安い肉を抱き合わせ(コンビネーション)輸入し、平均価格が課税基準価格に近づくよう工夫。安価な豚肉への課税を合法的に軽減する節税が定着している。

ところが、輸入業界では安価な豚肉を高く買い付けたように見せかけて申告するケースも後を絶たない。3月には、不正な手法で得た所得を隠したとして、所得税法違反で東京都内などの食肉輸入業者が逮捕されている。差額関税制度が所得隠しや脱税の温床といわれる由縁だ。

日本養豚協会の調査によると、今年1月時点で国内のある大手食肉卸売会社の輸入豚肉販売価格は1キログラム310円から540円。差額関税を払っていては「すべて赤字」になる状態だった。同協会は関税を不正に逃れた「裏ポーク」がまん延している可能性があるとして、財務省や農林水産省に輸入審査の厳格化を訴えていた。

同協会は輸出国の豚肉価格などを基に本当の豚肉輸入価格は「基準価格を200円近く下まわっているはずだ」と推定する。年間80万トン前後の輸入豚肉から本来もたらされるはずの関税収入は1600億円。しかし、2010年度の実績は180億円(推定)にとどまっている。1000億円を超える差額の中には節税分も含まれるが、不正に税を逃れた豚肉も少なくないようだ。

TPP巡る駆け引きも

財務省は今月4日、柴生田敦夫関税局長名で全国の税関に輸入審査を厳格にする通達を出した。9日以降の輸入豚肉通関手続きでは申告価格が妥当であることを証明する資料として、輸出国の輸出業者の仕入れ価格を示す資料や契約書付属資料などの提出も求めた。

「申告した通りの輸入かどうか、契約の内容を慎重に審査する」(同省の岸本浩関税課長)。農林水産省の協力も得て、輸入豚肉の部位の確認検査も充実させる。さらに外国企業を巻きこんだ大がかりな脱税に利用されないよう海外の税関当局にも協力を求め、国税庁とも情報交換を強める。

運用厳格化の背後には環太平洋経済連携協定(TPP)を巡る駆け引きもうかがえる。

大手商社などで構成する日本食肉輸出入協会(新井紀男会長)は、不正の温床になりやすい差額関税制度を廃止し、他の産品と同様に従量か従価の関税に変更するよう政府に求めている。しかし、海外産の安い豚肉の流入を恐れる養豚業界は「正しく機能していれば差額関税制度はいい制度」(日本養豚協会の稲吉弘之理事)とみる。

養豚協会は反TPPの急先鋒(せんぽう)でもある。民主党内のTPPに慎重な農業関係議員と連携して、関税水準の大幅な引き下げや撤廃を求める貿易業界の動きをけん制しているようだ。(編集委員 樫原弘志)

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