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企業活動 回復軌道に(北関東 復興に挑む)

被災者、生活再建は道半ば

東日本大震災発生から間もなく1年を迎える。被害を受けた港湾や道路など社会インフラの大半は順調に復旧し、製造業や流通業には震災前を上回る業績を達成した企業もあり、経済活動は本調子に戻りつつある。ただ、原発事故による風評被害や被災者の生活再建など「3.11」の傷は完全には癒えていない。農業や観光を含め復興に立ち向かう北関東経済の現状と課題を報告する。

急ピッチで復旧工事が進む茨城港常陸那珂港区

「5月ごろにはようやく本来の機能を取り戻せますよ」。北関東の海の玄関口である茨城港常陸那珂港区。止まったままの貨物積み下ろしクレーン2基を4月から5月にかけて順次再稼働させるメドがつき、県港湾課の富永幸一課長は胸をなで下ろす。岸壁利用はほぼ再開していたものの、クレーンの修理が遅れていた。

貿易フル稼働へ

2月にはクレーンが乗るレールを敷き直すため、海上から本体を移動させる作業をした。運休中の中国・韓国とのコンテナ航路も再開する見通しで、北関東の海上貿易はいよいよ本格的に再開する。

企業活動も順調な回復軌道を描いている。富士重工業群馬製作所(群馬県太田市)の1月の普通車生産台数は約3万8千台と前年同月に比べ20%増。1月単月として過去最高の台数を達成した。富士重への納入も多い歯車製造の菊地歯車(栃木県足利市)は自動車向け部品の2月の生産が前年同月を6割上回り、「トヨタ自動車、ホンダなどからも高水準の受注を得ている」(菊地義典社長)という。

関東・東北で居酒屋チェーン「忍家」などを展開するホリイフードサービスは昨年10月、2012年3月期の純利益を当初予想の約5倍に上方修正した。消費の回復傾向に加え、茨城や東北で復興事業に携わる人々が多く来店したことが貢献。最終赤字だった11年3月期から一転、思わぬ「V字回復」を予想する。

震災の教訓が新たな投資を呼び込んだケースもある。凸版印刷は2日、群馬県明和町に同社最大規模となる包装材料工場を新設する計画を発表した。

100億円を上回る投資に踏み切った決め手の一つが「自然災害の少なさ」(大久保伸一常務)。震災直後は包装材の不足がサプライチェーン(供給網)停滞の一因になったこともあり、新規立地に当たっては地盤の固さなど防災面を重視した。

中小の苦闘続く

しかし、業績が回復基調の大企業に比べて、今なお厳しい経営環境に身を置く中小企業は少なくない。茨城県内の5金融機関と県は中小企業の二重ローン対策として「茨城県産業復興機構」を昨年11月に創設し、被災事業者向けの債権を買い取る取り組みを始めた。これまでに56社107件の相談が寄せられたが、買い取り実績はゼロ。「条件面の詰めに時間がかかる」(県中小企業課)というのが難点で、対応に時間がかかれば中小企業の資金繰りに影響する恐れもある。

被災者の生活も震災前の姿を取り戻したとはいえない。茨城県では地震や津波などで家屋が損壊した1千世帯以上が、公営住宅や仮設住宅での仮住まいを余儀なくされている。

県内では震災で77万トンのがれきが発生し、依然3割が処理しきれないまま各地に積み上げられている。

震災では従来の価値観や地域のあり方が根底から問い直されることになった。企業や自治体、住民は今日まで新たな針路を模索しながら一歩ずつ前に進んでいるが、復興は道半ばだ。

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