アインシュタインがもし福島を見たら…(震災取材ブログ)
@福島・浪江

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2013/3/9 7:00
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東京電力福島第1原子力発電所の事故から2年を迎える福島県。いまだに15万人の県民が避難生活を続ける。多くの避難民は仮設住宅で生活し、生命は助かったものの仕事や故郷を失って生きがいを見いだせない人も大勢いる。「生命を奪わず生活を奪う」。福島県で取材を続けると、これが原発事故の本質ではないかと感じてきた。

原子力発電所事故は生命を奪わず生活を奪う(福島市の仮設住宅)

原子力発電所事故は生命を奪わず生活を奪う(福島市の仮設住宅)

2月下旬、原発事故で避難区域になった福島県浪江町の住民が生活する仮設住宅を取材した。福島県が主催する健康相談会が開かれ、約20人の避難者が参加していた。食事のアドバイスに始まり、体操、ゲームと続いた。ただ参加した高齢者の男性は「仮設住宅は狭く、やることが全くない」と肩を落としていた。

余生を家族と静かに暮らそうとしていた高齢者。自宅周辺は放射線量が高くて帰還できる見通しは立たず、賠償も思うように進まない。生活再建に向けた道筋を示されなければ心身とも厳しい状況に追い込まれる。原発事故は仕事や住居、共同体(コミュニティー)を破壊する。

これは、そもそも原発が安全かどうかを評価する審査基準に起因するといえる。なぜなら安全審査の考え方は、事故が起きた場合に人命が失われるリスクがどれだけ高いかをよりどころとしているからだ。

「確率論的安全評価」と呼ばれるリスク評価の方法で、事故が起きるシナリオと頻度、事故が起きたときの規模から、人間が死亡する確率を割り出す。飛行機事故やダムの崩壊などと比べて人命が失われる確率を割り出し、どこまで安全対策に取り組むかを決める。原子力の安全審査では米原子力規制委員会(NRC)が取り入れている。

2003年に日本の原子力安全委員会(当時)もこの考えを踏まえ「原子力施設の事故に起因する放射線被曝(ひばく)によって生じるがんによって、施設からある範囲の距離にある公衆個人の死亡リスクは年当たり100万分の1を超えないように抑制されるべきだ」と提言している。つまり、事故によって死亡するかどうかを判断すればよく、原発事故が起きても住民に避難生活を強いたり、放射線に対する精神的な不安は考慮したりしなくていいということになる。福島の現状はこれを体現しているといえる。

放射線による健康影響は不明な点が多い。高線量の放射線を浴びるとやけどなどで死亡するケースがあるが、低線量ならがんをすぐに発症しないうえ、長期的にがんを発症することがあっても、生活習慣や食事などによる影響も考えられるため原因が特定できない。避難生活で亡くなる人も多く、放射線は直接的な被害より、長期間にわたる影響の方が大きい。

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