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有力店生む「苗床」健在 新生北関東 流通業の最前線(5)

安い地価・激しい競争が磨く

前橋市の中心街は製糸業で栄えた歴史や新しさを好む県民性を背景に1990年代までは様々な店でにぎわった。ここを起点に多くの流通業が育った。

グループやフランチャイズ店を含め生活雑貨などの店を各地に40店以上展開するハンプティーダンプティー(前橋市)は82年、市中心街の銀座通りに前身の店を出した。93年には女性カジュアル衣料チェーンのハートマーケット(同)が同じ通りに開業した。

眼鏡店などを140店近く出すジェイアイエヌが88年に創業した場所も2社に近い市中心部。これら3社は社長の年齢も近く社長同士で飲むことも多かったという。

20位以内に5社

3社はその後、郊外などで店を増やし、それぞれの分野で注目される存在に育った。ヤマダ電機やカラオケチェーンのコシダカ(同)、スーパーのフレッセイ(同)なども群馬から域外に活躍の場を広げた。

北関東3県は有力流通業の宝庫だ。日経MJの2010年度小売業調査では、売上高20位までにヤマダ電機、ケーズホールディングス、コジマのYKK3社と群馬県高崎市で創業したビックカメラの4社が入った。

同じ企業グループのベイシアとカインズを1社と数えれば、20位以内に5社が入る。日本の人口の5%強を占めるにすぎない3県からこれだけの会社が生まれた。3県は「有力流通業の苗床」といっていい。

続く企業群も豊富だ。ホームセンターのジョイフル本田(茨城県土浦市)は特色ある大型店の展開で急成長を続ける。「ほしい時にほしいものを」を合言葉に客の声を反映し、品目数は22万点に。茨城県ひたちなか市の大型店をはじめ関東に15店を展開。1店平均で100億円を稼ぎ出す。

栃木県栃木市で創業したドラッグストアチェーンのカワチ薬品は地域スーパーの経営者が「最大のライバル」と見る存在だ。首都圏などに200店超を持つ。地域の中核となる基幹店の周辺でサテライト店を出す戦略を加速しており、年間出店数は上昇カーブを描く。

創業意欲目立つ

なぜ北関東から流通業が育つのか。1つは立地の有利さ。大消費地の東京に近く人口はそこそこあるが、地価は割安。2000年の大規模小売店舗立地法の施行以降は新しい道路やインターチェンジ周辺の田畑は絶好の新店候補地になった。流通業が創業期に資本や経営ノウハウを蓄えるのに適した場所だ。

ハンプティーダンプティーは92年、雑貨店としてはいち早く郊外型店を展開したのを機に店を増やしていった。貫井哲夫社長は「北関東は店舗展開しやすい。特徴ある店ならば数を増やしやすく、数が増えればブランドを固められる」と話す。

もう1つは地域内での競争の激しさ。ベイシアの土屋嘉雄会長は「地域で競い合うのでそこを勝ち抜けば他地域でも成功しやすい」と指摘する。ベイシアグループやYKKはまさに「北関東での成功を他の地域に広げる」戦略を実践してきた。

今後も北関東から新興勢力は現れるか。日本政策金融公庫によると、3県の2010年の創業融資先は482社と前年より8%増えた。大半は流通業を中心とした非製造業。全国は逆に前年より2%減っただけに、北関東の元気さが目立つ。

現在、好条件は変わりつつある。人口減時代に入り、出店候補地は減り、郊外の大型店は飽和に近い。ただ環境変化は新たな企業を生み出す好機でもある。続々と生まれる小さな会社の中に未来のヤマダやジェイアイエヌがあるかもしれない。

=第5部おわり

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