革新力 The Company 第2部

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お寺フェス、クラウドファンディングで資金調達

2014/6/3 2:00
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徳川将軍家の菩提寺としての歴史を持つ増上寺(東京・港)で4月29日、"お寺のフェスティバル"である「向源」が開かれた。20~40歳代を中心に約2000人が参加し、仏教関連の大規模なフェスとして注目を集めた。この開催資金を集めるために活用したのが、インターネットで個人から小口資金を募る「クラウドファンディング」だ。「伝統」の代表格である仏教と「最先端」金融の融合が、新たな可能性を開いている。

お寺フェスの「向源」はクラウドファンディングで資金調達した(4月29日、増上寺)

お寺フェスの「向源」はクラウドファンディングで資金調達した(4月29日、増上寺)

増上寺敷地内にある建物の一室で約40人の男女が筆を手に取り、黙々と白い用紙にお経を書き込んでいく。長文を書き終えた後の参加者は、やり遂げた達成感で笑顔を浮かべた。

若者たちでにぎやかに

フェス会場ではこうした写経に加え、座禅、お守り作成など、仏教に関するいろいろな体験ができるワークショップを開催。生け花や能楽といった日本の伝統文化に親しめる場も用意し、増上寺は若者たちのにぎやかな声が響き渡った。フェス自体の入場は無料で、ワークショップに参加する人は個別に料金を支払う。夜には壁面に立体映像を投映する「プロジェクションマッピング」で寺院を色鮮やかに染め上げ、会場は幻想的な雰囲気に包まれた。

「日常、出会う機会の少ないお寺や僧侶との接点を若者に提供したかった」。主催者で天台宗常行寺の友光雅臣副住職(30)は狙いを語る。向源は2011年の東日本大震災の後に初めてイベントを企画、常行寺で約70人が参加した。それから近隣のお寺や神社と協力して毎年規模を広げていった。知名度が高まり4回目の今年は増上寺で開くことに。天台宗の僧侶である友光氏が、浄土宗の増上寺でイベントをするのは異例という。仏教界からも大きな期待を寄せられているようだ。

だが、イベント規模の拡大にあたり頭を悩ませたのが資金の問題だ。参加料などで後で回収するとして、準備から開催までは自ら用意する必要がある。2000人規模のフェスには少なくとも400万円前後の資金が必要だった。寺院や企業からの協賛もあるが、「宗教色が出てしまうため企業は及び腰になりがちで限界があった」(友光氏)という。

1カ月半で寄付集まる

そこで目を付けたのがクラウドファンディング。「日本最大のお寺フェス『向源』の開催をご支援下さい!」。仲介サイト「カウントダウン」に事業のページを作成。活動の趣旨や目的などを詳しく紹介し、支援を呼びかけた。すると、1人当たり3000円から5万円まで寄付が集まり始め、1カ月半で目標の100万円に達した。「支援者から応援メッセージも頂き、力強いサポートになった」。他の協賛資金と合わせ、何とか開催にこぎ着けた。

カウントダウンを運営するアレックス(東京・品川)によると、サイト上でこれまで約30の事業が資金集めを実施した。累計の調達金額は4500万円程度。向源のようなイベントから、製品や作品を開発する案件もある。アレックスの担当者は「個人がお金を集められる仕組みとしてじわじわと認知度が高まってきた」と語る。

友光氏は来年以降も規模を拡大してフェスを開いていく予定。2020年の東京五輪をにらみ、外国人旅行者が日本文化に触れる場として育てる青写真を描く。「広告代理店に頼るのではなく、寺が自ら主体的に魅力をアピールしていきたい」。そのためにも、クラウドファンディングの活用を引き続き検討する考えだ。

(証券部 栗原健太)

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