響けエンジン音、「消す」から「奏でる」へ進化

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2014/6/2 7:00
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マフラーは騒がしいエンジン排気音を抑えるためのもの。そんな自動車業界の常識を覆す技術の開発に創業86年目の老舗の金属加工メーカー、三五(愛知県みよし市、恒川幸三社長)が挑んでいる。目標は伊フェラーリや独ポルシェのように走りの"音"そのものをブランドにすることだ。音を「消す」から「奏でる」へ――。その取り組みを追った。

■騒音ではなく、音色

音色作りを重視したレクサスの「LFA」

音色作りを重視したレクサスの「LFA」

「これはノイズ(騒音)ではなくサウンド(音色)だ」。トヨタ自動車の「レクサス」の最上位スポーツカー「LFA」。動画サイトで検索すると、エンジン音を聞かせる草の根サイトの数に驚く。スポーツカーはデザインや走りで注目を集めることが多いがLFAは音にもこだわった。それを裏で支えたのが三五のマフラー技術だ。

1928年にプレス加工業として創業。すぐに、できて間もないトヨタ自動車工業(当時)との取引を始め、以来トヨタ向けを中心にマフラーなど自動車用の排気回りに特化した部品づくりの技術を磨き上げてきた。曲げの技術に定評があり、トヨタ向けのシェアは約6割と業界トップだ。

排気回り部品の開発の歴史は車の普及に伴う「騒音」との闘いだったともいえる。例えば70年代に開発した二重構造の排気管。運転中は管全体が小刻みに振動し「放射音」が発生するが、管を二重にすれば間に空気層ができるため音が外部に伝わりにくくなる。

画像をクリックすると、レクサス「LFA」が奏でるサウンドが聞けます

画像をクリックすると、レクサス「LFA」が奏でるサウンドが聞けます

80年代には、エンジン回転数を上げたときにマフラー回りで生じる空気の対流音が問題に。このためマフラーに特殊なバルブを取り付け、エンジン回転数に応じて開閉ができるようにした。排気管内の圧力を柔軟に変えられるため、エンジン効率を落とさずに消音できる。市販車のマフラーでは業界初の試みだった。

最近では、マフラー側面に直径5センチメートル程度の鉄塊をゴムで取り付ける技術の採用が進む。エンジン回転数が上がった時に特定周波数の音が排気管内で振動しやすくなるのを防ぐ仕組みだ。2012年発売のトヨタ「クラウン」などで使われている。

■目指したのはF1のエンジン音

消音で着実な地位を築いたはずの三五に転機が訪れたのはLFAの開発だった。トヨタからの注文は「フォーミュラ・ワン(F1)の車を思わせる、低速時も高速時もきれいに聞こえる音をつくってほしい」。エンジン音を聞いただけでLFAと分かる。欧州の高級スポーツカーのように、エンジン音をブランドにしたいという要求だった。

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